過剰診断(余剰発見)の意味と、その「数えかた」【後編】

interdisciplinary.hateblo.jp 上記記事の続きです。 余剰発見の確かめかた ここからは、どのようにして余剰発見が確かめられるのか、あるいは、集団で見た場合に、余剰発見が起こる程度をどう評価するのか、を説明します。 個別症例 まず、ある個人について…

過剰診断(余剰発見)の意味と、その「数えかた」【前編】

はじめに 甲状腺がん検診でよく取り沙汰される過剰診断ですが、議論している人たちのあいだで、必ずしもその意味合いがよく理解され、諒解されている、とは言い難いようです。語の意味合いが人によって異なっていれば、やり取りが噛み合うはずもありません。…

清水一雄氏による福島甲状腺がん検診に対する意見と、健診

www3.nhk.or.jp 上記記事より引用します。 一方、甲状腺の専門医で、検討委員会の甲状腺専門部会で部会長も務めていた清水一雄さんは、「報告の内容は尊重するが、まだ2回目の結果であり、3回目の結果や継続中の4回目など、引き続き、さまざまな検査を踏…

過剰診断(余剰発見)と検診の議論一般に対する誤った理解

togetter.com なるだけシンプルに行きます。 手術の基準を変えても過剰診断は防げないという主張が事実に反することは30秒考えれば嘘だとわかる。 ↑まず前提として、ここで議論されているのは、 がんと確定診断されたとして、それを手術するかどうか という…

検診を考える時に押さえておくべき事

note に書いたのと同内容のものを、改めてこちらに書きます。 検診について考える際に、ここは押さえておいたほうが良い、という所を書きます。これまで何度も言ってきた事ですが、用語の意味に諒解が取れていないと、話が噛み合うはずもありません。 検診は…

個別と集団――くじ引きと過剰診断

webronza.asahi.com 菊池誠氏による記事です。そして、この記事への反応。 菊池誠の駄文は変なところばかりだけど、特にこの「過剰診断かそうでないかは臨床的に区別できないので、過剰診断を避ける方法は検査しないことだけ」には失笑。じゃあなんであんた…

名取宏著『医師が教える 最善の健康法』

医師が教える 最善の健康法作者: 名取宏出版社/メーカー: 内外出版社発売日: 2019/06/24メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 読みました。 本書は、一言で表現すると、穏当な本です。これをすれば必ずこうなるとか、絶対にこれはしてはならない、と…

中川恵一氏の誤り――がん検診の論理

hc.nikkan-gendai.com 全くひどい内容なので、指摘します。 がんは早期発見が一番です。 誤り、もしくは不正確です。 明らかに、本記事は検診の文脈ですので、早期発見とは、無症状時に発見する事に同義です。そして、がんは、無症状時に見つければ良いとい…

続・経過観察

前の記事では、経過観察を、 がんを見つける前の経過観察 がんを見つけた後の経過観察 に分けましたが、これは、表現を変えると、 結節・のう胞の経過観察 がんの経過観察 とも言えます。また、もう少し細かく見ると、福島の甲状腺がん検診では、ゴールドス…

経過観察と、余剰発見の「抑制」

文末に追記:2019年6月7日未だ、混乱する意見が見受けられますので、整理しておきます。経過観察福島の甲状腺がん検診周りで、経過観察をおこなうので、余剰発見が抑制出来るとの意見を見る事があります。これについて考える時に重要なのは、どのフェーズで…

甲状腺がん検診をおこなうべきで無い理由と、余剰発見と害のはなし

もう、何度も何度も何度も何度も書きますが。検診をおこなうべきで無い理由福島(に限らず一般に)において、甲状腺がん検診をおこなうべきで無い理由は、余剰発見等の害があるからでは無いです。そうでは無く、効果が認められていないからです。効果が認め…

福島での甲状腺がん検診に反対する人の、乱暴な主張

まず、私自身の立場を、あらかじめ書いておきます。 私は、福島における甲状腺がん検診には、反対の立場です。出来るだけ早く、長期にわたる検診の計画を、凍結するべきだと考えています。 このように、私は甲状腺がん検診には反対の立場ですが、同じような…

適中度の分母表現について

検査性能について説明する場合、適中度の説明が、結構むつかしいのは、試みた事がある人なら解ると思います。陽性適中度を求める式は、正陽性数 / (正陽性数 + 誤陽性数)ですが、勉強しはじめだと、ここの分母が特に解りにくい。で、考えたのですが、ちょっ…

感度特異度シミュレータの改良

以前作った、感度や特異度などの、診断の指標をグラフィカルにシミュレートするページを、少し改良しました。 screening.iaigiri.com 前は、操作パネル上にスライダを置いていましたが、今回は、左側のパネルに直接付けました。方向も揃えてあるので、直感的…

2019年4月28日のメモ

例の結城浩さんの問題について、質問をする。 もし、連載の次回以降で補足される予定だったのだとしたら、野暮な気もするけど、そもそもが相当無理のある設定なので、一応送っておく。 結城さんが執筆なさったこちらの記事、“問題(プレミアム判定キット)” …

病気の判定と確率と割合

第257回 確率の冒険:《命》に関わる確率(前編)|数学ガールの秘密ノート|結城浩|cakes(ケイクス) 病気などの検査にまつわる確率の問題、読み物や教科書においてもしばしば紹介される、ある種の定番の話題でありますが、実際、理解する事は、なかなか…

令和

令→零→〇和→輪→○〇○→∞よって、令和→∞Infinite!!

P値・帰無仮説・有意

「統計的有意」には弊害があるとして800人以上の科学者が反対を表明 - GIGAZINE 有意差検定では実験の計測結果から「P値」と呼ばれる確率変数を計算します。例えば、実験結果が起こりえる確率が95%以上である場合は、P値は0.05以下になります。慣例的に科学…

「子宮頸がんは検診とワクチンで患者をゼロにすることのできる唯一のがんです。」という主張はおかしい

www.mamoreruinochi.com 子宮頸がんは検診とワクチンで患者をゼロにすることのできる唯一のがんです。 端的に言って、この主張はおかしいです。 まず、予防概念をおさらいします。 予防は、次のように分類されます。 一次予防 病気に罹らないようにする事 二…

罹患と死亡の指標――グラフィカルに

以前書いた、死亡割合と致死割合について説明した記事です。 interdisciplinary.hateblo.jp 当該記事では、専門的には峻別すべき用語が曖昧に用いられている事を指摘し、実際にはどのような概念であるのかを、図も用いて解説しました。 記事を書いてからしば…

確率・統計の考えかたの整理

誤っていたり、こうしたほうが良いのでは、という所があれば、教示頂ければ幸いです。 興味のある対象について、起こり得る結果を、標本点と言う。 起こり得る全ての標本点を要素とする集合を、全事象と言う。 全事象の部分集合を、事象と言う。 要素が一つ…

ランダム

二つの図のうち「ランダムな点の分布」はどちら? こう聞かれて,「左」と答える人もいるでしょう。実際は「右」がランダムな点の分布で,左は点どうしがなるべく重ならないように配置したものです。人は,ランダムである右の図から,“意味がありそうなパタ…

役に立つか否か、という事

三角関数が役に立つのか、とかその辺の話。 そもそも、役に立つというのは、誰にとってとか何にとってといった所とセットにして考えないと意味の無いものです。したがって、それを設定せずに単に、○○は役に立つのか?と問う事にも、意味はありません。 三角…

桑満おさむ氏の不正確な説明――甲状腺がん検診の議論を巡って

はじめに 五本木クリニックの桑満おさむ院長が、次のような記事を上げておられます。 www.gohongi-beauty.jp 要約すると、東京学芸大学において、小児または若年者に対して甲状腺がん検診がおこなわれる事、に対する批判、および、甲状腺がん検診一般をおこ…

「血液サラサラのお薬」という表現は「ニセ科学」なのか

Twitterで、次のような意見を見かけました。 ワーファリンとかも血液サラサラって言われてるらしいけど、「血液サラサラのお薬」ニセ科学扱いされないのはなぜだろ— bn2 (@bn2islander) November 21, 2018 ワーファリンとかも血液サラサラって言われてるらし…

がん検診の専門家による述懐

がん検診判断学作者: 久道茂出版社/メーカー: 東北大学出版会発売日: 2010/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 上記書籍より引用します(P159・160より。強調は原文通り)。 過剰診断とは、一般に「もし検診を行わなければ臨床的に診断されなかっ…

MizuhoH(_keroko)氏に対する疑問

すいません、不躾な言い方をしますと「ほんとそういう所だぞ」です。つまり、言いたいことがおありのようですが、説明や言葉を尽くすカロリーをなぜか節約する。そして、ニセ科学/医療を標榜する方は、その傾向が強い印象があります。でも困るし、だいたい失…

「リスク」とは「害」や「不利益」の事では無い

NATROMせんせい、リスクじゃなくて「害」という言葉をつかうのはナンデなのかしら。たとえば「すべての予防接種には害がある」という言い方をされたりするんやろか。https://t.co/NS4z4tR1ek— flurry (@flurry) October 31, 2018 このような意見を見かけまし…

菊池誠氏の主張 “甲状腺検査で見つかった癌は殆どが無症状の微小癌」” は誤っている

菊池さんが、次のような発言をなさっていました。 被曝影響で甲状腺癌は増えませんよ。甲状腺検査で見つかった癌は殆どが無症状の微小癌ですから、スクリーニング効果と過剰診断です。検査の犠牲者です。あのような倫理的に問題のある検査なんてやってはなら…

事実と認識

やるべき事は。 認識に事実を合わせようとする のでは無く、 事実に認識を従わせる 事です。 事実は事実として、自分の認識とは別に在るものなのだから(認識が事実を再構成する、みたいな思想はともかく)、いま自分が持っている認識に事実のほうを合わせよ…