統計学批判

今読んでいますが、これは紹介する価値があるように思います。
数理統計の方法―批判的検討―
結構古い本ですけれど、それ故に、当時の議論が詳細に生々しく描かれています。
批判、とありますが、たまに見られるような、どこかで聞きかじったような話を受け売りで展開して的外れな方法批判を行うものとは全く違います。統計学に関する哲学的な議論ですね。こういう本は、最近刊行された物の中ではほとんど見かけないので(むしろ科学哲学の本で見る気がする)、貴重だと思います。

追記
本書67・68ページで、大橋隆憲氏の文が、社会統計学派の主張として引用されています。その意見に賛同するかどうかは別にして、興味深いものであるので、孫引きします。※原書で傍点の所は強調表示にする

 「事物の量的側面についての数学的抽象は,その質的規定の抽象次元との関連を見うしなわぬかぎり,ただそのかぎりにおいてであるが,現実認識のためのきわめて重要な補助的操作・手段である。この意味においてわれわれは,数学的抽象を科学的研究にとってきわめて重要な手段として重視する。……しかし,こうした数学的ないし数量的操作は,諸科学の具体的な諸方法にとってかわりうるものではない。……けだし,数学はそれ自身,抽象的同一性を設定した上で,特定の諸規定の抽象的構造を前提としているのであって,諸科学の前提する具体的事物の質的内容の特定の諸規定の具体的構造とは,抽象の側面と次元を異にしているからである。したがって,諸科学の立場においては当然に,数理的ないし数量的操作は補助的,従属的な操作にすぎないはずである。
かりに数理的操作が特定の歴史的段階において特定の科学の発展にたいしていかに大きな役割をはたし,また,はたしたようにみえようとも。」