【メモ】疫学 / EBM:Evidence Based Medicine / EBN:Evidence Based Nursing

『系統看護学講座 専門基礎分野 公衆衛生 健康支援と社会保障制度[2]』よりメモ的に引用*1
※体裁を適当に変更
※重要と思う所に強調+色付け
※註釈は省略

1.疫学の定義
○日本疫学会の疫学の定義
 疫学という学問自体は一般的にあまり知られていないが,疫学の研究成果はだれでも知っているものが少なからずある。身近な疫学研究の例としては,喫煙が身体に及ぼす影響で,喫煙本数と肺がんの死亡率との関係である。疫学の定義は多くあるが,ここでは日本疫学会の定義を紹介する。疫学とは「明確に規定された人間集団の中で出現する健康関連のいろいろな事象の頻度と分布およびそれらに影響を与える要因を明らかにして,健康関連の諸問題に対する有効な対策樹立に役立てるための科学」である(日本疫学会 1996年)。ここでは,疫学の歴史を簡単にふり返り,疫学がなんの役にたつのかをみてみよう。
○疫学は感染症の調査から始まる
 疫学は,まだ微生物の存在を知らなかった19世紀なかばに,感染症の研究から始まった。疫学史上コレラの研究で有名なジョン・スノウは,英国のヴィクトリア女王時代の麻酔医だった。コレラで死亡した人の共通点を調べ,居住地域がかなり限定されていることから,水道の汚染が原因ではないかと推論した。その後,当時のかぎられた技術と知識で,水道水の調査や,コレラ多発地域から離れた地域の住民でコレラで死亡した者が,汚染地域に水を買いに来ていたなどの調査を行い,特定の水道水がコレラの原因であることをつきとめ,予防対策をたてることに成功した(Roht ほか,1982)。
○慢性疾患の増加と,疫学の活躍
 20世紀を過ぎてからは感染症の死亡率が低下し,慢性疾患の死亡が増加し始めた。20世紀なかばになると,欧米で虚血性心疾患による死亡率が顕著に増加し,その原因を追求する手段として疫学的手法が用いられた。高血圧,高脂血症,運動量,摂取食品の種類や量などが虚血性心疾患の危険因子(病気を引きおこす要因)と判明すると,これらのリスクをもっている人を対象に,食事療法や薬物療法により病気を予防する研究も行われるようになった。
 上記のように,疫学は疾患の原因を特定し,対策をたて,その対策を評価するのに使われる。近年の疫学の貢献としては,エイズの調査や糖尿病などの慢性疾患の研究である。エイズは発見当初,未知の疾患で,疫学調査により感染症であることが判明し,感染経路が特定できた。糖尿病も遺伝・食事・運動不足などが危険因子と同定され、現在は食事療法や運動療法による予防の成果について研究が行われている。また,病気だけでなく,交通事故や不慮の自己の発生場所・時間帯,死亡者の人口学的特徴などを把握し,事故の予防にも疫学は活用されている。ここでは,人間集団の健康状態を知るための指標を学習する。
『系統看護学講座 専門基礎分野 公衆衛生 健康支援と社会保障制度[2]』(P34・35)

2.科学的実証に基づいた医療と看護(Evidence Based Medicine/Evidence Based Nursing)
EBMからEBNへ
 Evidence Based Medhicine(EBM)は,1991年カナダのマクマスター大学のゴードン(Gordon Guyatt)が書いた1頁の論文に端を発する。生物医学的な知識に疫学的手法を統合し,患者集団での診断・予後・治療などに関するデータを定量的に解析することで,医療の現場で患者にとって最良のエビデンスを求め,それを診断や治療に役だてるものである。看護ケアも,妥当性の高い根拠に基づいたケアを行いケア効果を証明する Evidence Based Nursing(EMN)を求められている。
○EBN/N の3段階
 EBM/N には,エビデンスを『つくる』『伝える』『つかう』という3段階がある。臨床やフィールド研究で、エビデンスを「つくる研究」の蓄積が必要である。エビデンスをつくる臨床疫学研究は,研究デザインによりエビデンスレベル*2が規定される。

 エビデンスを「つたえる活動」として,1992年から始まっているコクラン共同研究の成果として The Cochrane Library が,2000年からはキャンベル共同計画が始まっている。そして,最良のものを適用できるよう患者の自己決定を支援するものとして現時点におけるエビデンスを医療者が患者に提示し「つかう」ことである。
○EMN と看護研究
 ケアを有効性の検証なくして患者に適用することは,エビデンスのないことをしているに等しい。看護ケアに,客観的で妥当性の高い,言いかえれば患者に納得してもらえる根拠を求めるのが EBN である。EBM/N の手法は,患者の問題に始まり,患者の問題解決に終わる。すなわち,患者の問題を当事者に明確化し,その解決のための最良のエビデンスを求め患者に提示し,最終的にはエビデンスの利用を患者が自己決定できるようにすることである。看護研究を考える場合にも重要な視点である。研究者の立場で考えた必要性や興味だけで研究してはならない。研究結果がほんとうに患者の役にたつものを,医(看護)の倫理に基づいて慎重に計画し,実施することが求められる。
『系統看護学講座 専門基礎分野 公衆衛生 健康支援と社会保障制度[2]』(P112・113)

医師が行う治療等のみならず、看護においても「証拠に基づいた」看護が重要である、という事は押さえておく必要がある。
エビデンスを

  • 作る
  • 伝える
  • 使う

という段階は大切。

患者の問題を当事者に明確化し,その解決のための最良のエビデンスを求め患者に提示し,最終的にはエビデンスの利用を患者が自己決定できるようにすることである。

ここをよく押さえる。当事者(患者)がいかに意識し、適切に自己決定を行えるようにするか、という事。これは、医師やコ・メディカル、患者自身やその親近者も含めた丁寧なコミュニケーションがあって初めて達成出来る事なのだろうと思う。

*1:第11版

*2:下の表。キャプチャ環境が無いので、 Word で作成しました。