規制後に生レバー?

2012年6月30日追記:続きのエントリー⇒生のレバーを加熱用として出す場合

■発端

twitterでこういう画像が出回っていました⇒Twitter / yumyuyumyum: 脱法レバ刺しきたーー!!

これを見て感じたのは、本当かいな? という事。規制後にこういう出し方をするのは予想されていた事だけれど、こりゃまたあからさまだなあ、とまず思ったのと、twitterなどでは、本物のように見えて実はそうで無いものがしばしば拡散される場合があるので(コラ画像や手製の偽物の可能性は考えておいて良い)、ちょっと保留しておこうかな、となったのです。

で、色々調べてみました。結果としては、本当にメニューにそう書いてあると考えて良いだろう、というものでした。以下に資料を示します。

■資料

○画像

まず、同じメニューを撮影したと思われる画像を探しました。別人が同じ物(正確には同じとは限らないが)を撮った画像がアップされていれば、実際にそれがメニューとして出されている可能性が高いと言える、と考えたからです。

それぞれ、同じメニューを撮った別の画像です。

○記事

次に、もっと直接的な情報です。

さよなら“レバ刺し”、禁止目前で県内飲食店にぎわう/神奈川:ローカルニュース : ニュース : カナロコ -- 神奈川新聞社

これは、生(牛)レバー規制を目前にして需要が高まっているらしい、という事を紹介した記事ですが、その中に次のような文があります(強調は引用者による)。

横浜市中区のホルモン屋「幸喜屋」の川合崇友店長(33)は「うちの看板商品。衛生管理を徹底して開店以来5年間、一度も問題になったことがない。禁止が決定されたものは仕方ないが、悔しい」と話す。来月からは、コンロと一緒に「焼きレバー」として提供する予定だ。

店の名前が、画像のメニューの店名と同じですし、同店のスタッフ紹介(幸喜屋のサイトへリンク)に同名の店員の紹介があるので(※スマイルという店員。PDFファイル)、間違い無いと言って良いでしょう。

■感想

それにしても、生レバー禁止にまつわる話題、という文脈で、“来月からは、コンロと一緒に「焼きレバー」として提供する予定だ。”というのが出てきたのにはびっくりしました。これって、店も記者も、「別にいい」と思ったから出しているのだろうと思われます。確信的とでも言いましょうか。

実際、規制後にこのようなメニューを出す、というのが法的にどのような問題になり得るのか、は私は知識不足なので云々出来ませんが、健康への影響があるという事で規制されるものをこのようなかたちで今後も出す、という姿勢については、色々な事を考えます。食品の危険に関する認識であるとか公衆衛生上の問題とか、あるいは、それまで健康被害が起こっていない(と認識)事の自負であるとか、そういう心理的なものなどが絡み合っているのでしょう。

2012年6月30日追記

id:ryokusaiさんのブクマより。

ryokusai それに文句付けるなら焼きものとしてのレバーも当然生で出されてゐるわけなんだがどう区別つけるのさ? 2012/06/30

はてなブックマーク - 淨庵大福帳

そもそも、「区別しにくいようにする」のがこの問題の本質だと思います。生で食べてもいいよ、と言ったらアウトなのだから、焼き物用として供するけれど実は……というのがどのくらいあるか、という事でしょう。

改めて画像にあるメニューの文章を見てみると(強調は引用者)、

巷では7月からレバー刺しの提供について騒がれておりますが、幸喜屋は従来の『鮮度、肉質、盛り付け』と全く変わる事無く、これからもご提供し続けます!!ただ、7月以降はテーブル上で焼いてお召し上がり頂けるようにコンロを設置させて頂きます。また、メニュー名が「レバー刺し」から『レバー』に生まれ変わります。

引き続き、幸喜屋こだわりの『レバー』をご堪能ください。

このようです。わざわざレバ刺し規制について冒頭で触れていて、盛り付けなども全く変わらない事を強調しています。更に、7月以降になってからコンロを設置すると言っています。そして、「メニュー名が」変わる、と書いてあります。焼き物として出すなら、メニューの名称が変更されるという説明は引っかかります(「違うメニュー」のはずだから)。それに、レバーの生食を止める意識があるのなら、「騒がれて」「これからもご提供し続けます」という表現になるでしょうか。客が焼くスタイルだとしても、「よく焼いて食べるように」と注意書きし、新メニューはレバ刺しとは全く違うものだと強調するのが筋ではないかと思います。

もちろん、これは解釈であって、「別に生食を促したり、見てみぬふりをしている訳では無い」という解釈も成り立たない事は無いです(そのメニュー以外にどこかに関連の文があるかも知れない)。先ほど書いたように、生で食べていいよ、とはどうしたって書けないのだから、「どっちとも取れる」言い方をするのはある訳です。しかし、もしレバ刺しが危険のある料理だと認識するのなら、「生(あるいは不充分な加熱)で食べないように」と言うのが最もストレートで合理的だと思われます。

追記前の最後の所で私は、このようなメニューの出し方が法的にどういう問題になり得るかは判らない、と書いています。それは法的に専門の話になるだろうし、店の提供の仕方全体が検討されて初めてまともな意見が言えるものだろうと思うからです。だから私自身は、あれをもって「脱法」とは言いません(そもそも脱法という概念がどのように使われているかをそんなに知らない)。タイトルを「生レバー?」としているのも、メニューの書き方やカナロコの記事の内容からはそう解釈出来るんじゃないか、と考えたからです。明言はしていないけど(と言うか出来ない)それって実質同じじゃないの? となったという事です。

これは他の事例ですが⇒レバ刺し7・1消滅を前に食べ納め殺到 - 社会ニュース : nikkansports.com

この記事に、次のような部分があります(原文のリンクは外し、引用者が強調を施した)。

 そんな中、厚労省の方針に反発し、東京・上野の某焼き肉店は、7月以降も常連客のみに“裏メニュー”としてレバ刺しを提供する。客には、レバ焼きとして注文してもらい、生で食べるかどうかは、客の判断に委ねるという。

実際にこのような店があるという事です。「レバ焼きとして注文してもら」うのに、「生で食べるかどうかは、客の判断に委ねる」のだそうです。