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因果から相関へのシフト?

「ビッグデータ」がもたらす「因果関係」から「相関関係」へのシフト—理由なんてどうでもいいんです - ihayato.書店 | ihayato.書店
今一つ主張が解らない、と言うよりは、そもそもそれぞれの言葉の指す意味が判然としない感じです。その言葉というのは、

  • 相関関係
  • 因果関係
  • 理由
  • 結論
  • 原因

こういったものですね。
リンク先は書評エントリーですから、どういう事が本で書かれていて、どのような認識を書評の書き手が持っているのか、というのは切り分けておく必要があると思いますが、引用文(つまり本に書かれている事)を見ても、ちょっとピンとこないものがあります。
たとえば、「オレンジジュースとアスピリンの組み合わせで癌が治る」というのが、相関関係を見出した例として出されていますが、これは、○○によって××が起こる、という言明ですから、因果関係を示す表現ではないかと思うのですが、どうでしょうか。これがたとえば、△△を摂る量が多い地域では、□□という病気に罹る人が少ない、といったものなら、それは相関関係(関連)を示す、と言えるでしょうけれど。

本書が興味深いのは、ぼくらがこの相関関係の「理由」を重要視しなくなる、と主張している点です。

(強調は引用者による)ここにある理由という表現。後にある説明を見ると、これは現象の起こる仕組み、それっぽく言うとメカニズムを指しているように思いますが、それを重視しなくなるという事があるのかどうか。いや、それを考える前に、ぼくらがという言葉でどのような範囲を指しているかが解らないというのがありますけれど。
その後では本を引用して、社会が因果関係を求めなくなるだろうという推測あるいは展望が述べられていますね。この因果関係と、先に引いた理由はどのような関係にある概念なのでしょう。
もし、理由というのがメカニズムを指す言葉だとして、それと因果関係は同じ概念では無いですよね。そもそも、
メカニズムが不明でも因果関係にアプローチ出来る
というのが、科学の方法の教える所です。
リンク先の主旨は、「因果関係」から「相関関係」へのシフト—理由なんてどうでもいいんです -という事で、本文を読んでいると、因果関係を考える事は理由(仕組み)を追求する事だ、と言っているように見える訳ですね。けれどそもそも、因果関係と、理由(仕組み)を考える事とは、同じでは無い。つまり、
因果関係を重視するが理由(仕組み)は後回しにする
という場合があり得る。
後の方を見ると、

そのとき、みなさんは「理由」、すなわち「因果関係」を模索します。

こう書かれています。ここでは、理由因果関係を同じような概念と看做しているようです。でも、この文脈からすると、この理由は、メカニズムというよりは、原因を指しているようにも見える。今一つ用語の意味が判然としません。

ビッグデータの時代においては、無数のデータが「あなたが癌になったこと」についての「相関関係」を導き出します。

何をもってビッグデータの時代と言うのかよく知りませんが*1、ある病気なり何なりについて、いくつもの因子との関連を見出していく、というのは、それこそ医学方面で当たり前に行われている方法にも思います(得られるデータ量が桁違いに膨大になったとしても、どのようなデータをどのように使うか、という所を考える事には、方法的に、質的な大きい違いが出てくるとは考えられないのですが、どうでしょう)。そして、観察によって得られた色々の関連から因果関係にアプローチしたり、多数の条件を適切に統制して、要因と要因との因果関係をより精密に見出していく、といった方法を組み合わせて現象の構造に迫っていく、というのが科学の方法だと思います。医学方面においては、疫学の方法が特に重要であるでしょう。

「社会が因果関係を求めなくなる」とすれば、みなさんはここで「自分が癌になったわかりやすい理由」を模索するのをやめ、データがもたらす「ご宣託」に納得する、ということです。「あぁ、データによればそういうことなのか。じゃあ自分が癌になるのも仕方ない…死を受け入れよう」と。データがまさに、新しい神になる時代です。

とすればがどこから出てくるのかよく解らないのですよね。ビッグデータの時代になれば、何故原因を追求する気が薄れて、多数の要因間の関連を見てそれをそのまま受け容れるようになるのか、という心理社会的な理由が解らない。
ああ、私はここで、理由を求めていますか。社会が因果関係を求めなくなる、という事の理由は何ですか、と。
それは相関関係を示す事は出来ませんね。将来についての推測の話なのだから。

*1:私が読む範囲の統計学やデータ解析の本では、その言葉自体を見る事が無いので、概念がよく解らない。情報系やマーケティング方面の方でよく出てきますか?