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【書評】層・射程――NATROM『「ニセ医学」に騙されないために』

「ニセ医学」に騙されないために   危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!

「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!

買いました。
特に医学医療に興味も無い人、それらの知識に縁遠い人、イガク? イリョウ? と聞いただけで眉をひそめるような人に、医学のようで医学で無いものが世の中にはあり、それがとても大きな問題を孕んでいるのだという事を知らせたい、と考えてこの本を勧める事は、無いです。
この本は、多少は関連の知識を持っている人、元々少しは関心がある人、に向いた物のように思います。
もし、そちら方面に全然関わりが無いような人にもこの問題を知ってもらいたい、と考えていて、これを読んで欲しい、と思っている方には、まずご自分で読んでみて、それを噛み砕いて解説するなり、一緒に読むなりする、のが良いのではないか、と言っておきたいです。少なくとも、良い本が出たから読んでみて、と送る(贈る)ような本には思えません。
前に、畝山智香子さんの本を紹介しましたが、それを読んだ時と似た感想ですかね( 安全と安心と食べ物と - Interdisciplinary )。それが良いとか悪いとかでは無く、どういう所に向いているだろうか、という話です。
たとえば、標準医療とか代替医療といった言葉が、どういう意味合いかの説明が無いまま文章の中にどんどん出てくるような、そういう本です。そういった文章がスルスル読める人なら、参考になるでしょう。私は、数ページ読んで思いました。これって、元々良く知らない人が読めるの? と。
引用

 私が見るところでは、「日本人は薬漬け」というデマは『標準医療否定』と結びついている。標準医療を否定する最も大きな動機は、患者さんの不安を喚起することがビジネスにつながるからだろう。普通の病院で行われている標準医療が「患者を食いものにする儲け主義のビジネス」だと思い込まされた人は、何を頼るだろうか。標準医療の代わりに、代替医療、健康食品や器具、でなければ『真実』を教えてくれる本や講演会に頼るだろう。もちろん、すべてが有料で、医療費よりも高くつくこともある。結局のところ、標準医療否定こそビジネスなのだ。
『「ニセ医学」に騙されないために』P17

こういう文がすんなり読めるかどうか、ですね。

余談1

なぜ、よりにもよってその出版社から出した? といったような事が話題になりました。それについてのNATROMさんの説明はこちらです⇒メタモル出版から本を出したわけ - NATROMの日記
で、メタモル出版から、今回NATROMさんが書いたような本が出るとは、という驚きの声が上がった訳ですけれども、実はここに関して、先駆的な本があります。

テレビゲームと子どもの心―子どもたちは凶暴化していくのか?

テレビゲームと子どもの心―子どもたちは凶暴化していくのか?

これは、社会心理学者の坂元章氏の本で、テレビゲームが及ぼす影響についての社会心理学的な知見を紹介しつつ、実に丁寧に問題を解説した良書です。ゲーム悪影響論の議論が行われる界隈ではしばしば言及される本で、以前にも、この出版社は結構怪しげな本を出しているな……と話題になった事があります。今回、坂元氏の本に言及している意見がほとんど見られなかったので(私が見たのは数個)、ご紹介した次第です。

余談2

筆名に関して。
医師が筆名で本を出すのはけしからん、と言う人には、
著者が実名か匿名か筆名かという条件が、意見を支える証拠の重みにどう関係するのか
を説明して下さい、と訊きたいですね。たとえば、著者名と著者プロフィールの部分を破り捨てた本の情報は、その時点で無価値になるのですか?