情報の伝えかた――栄養疫学の事例

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いずれも、栄養疫学的見地からの記事で、内容そのものについては概ね妥当な記事だと思われます。※前者の記事については、食習慣改善の提言等の部分まで全面的に賛同しているものではありません

しかし、情報を丁寧に冷静に伝えるという観点からは、後者のほうが優れたものと考えます。前者は、キャッチーさを狙ってか、題や副題に、かなり煽るような表現が並んでいます(※題は必ずしも著者がつける訳では無い)し、色に着目させて論ずるなど(精製されているかどうかが重要なのであって、必ずしも色が重要なのではないと加えるくらいなら、精製の度合いが高い低いと、そのまま書けば良い)、気をつけるべき点があります。
記事内容は、そもそも主食と認知されているような物(白米)が、2型糖尿病罹患のリスクを上げる、という因果関係に関する言及なので、その情報が与えられる側の心理社会的な部分をよく考慮して書くのは、正確に情報を知らせるという意味で、より重要です。

後半の、糖尿病と白米摂取の関連に対する言及や、玄米に置き換える事などの勧めは、かなり慎重な書きかたではあります。しかし、記事への反応を見ると、きちんと全体を参照していないような反論(になっていないもの)も見受けられます。題などのインパクトは大きいのでしょう。
もちろん、読みが浅いのは、多分に読み手の責任です。誤解されないような書きかたをするというのも、限界があるでしょう。勝手に読む人はどこまでも勝手に読むので(ここは強調したい所です)。それは念頭に置いても、なるべく煽るような表現は控え(繰り返しますが、題などは必ずしも著者が関わらないので、記事の構成全体の話です)、丁寧に説明するのを心がけるのが良いでしょう。

NIKKEI STYLE の記事は、対話形式になっていて、聞き手に、読者の代弁をさせています。ここはこうだと思うのだがどう考えるのが良いのか、と問いかけて、それに答えてくれる、という形式です。囲みで、疫学的方法の説明を補足しているのも良い所です。また、食事と密接に関わっている、経済的要因にも触れていますね。私は、こちらのほうが丁寧だし、読者視点に立った親切な書きかただと評価します。

改めて、東洋経済記事の著者の津川氏は、twitterで↓のような発言をおこなっています。

https://twitter.com/yusuke_tsugawa/status/984931995837870080

ただエビデンスを提示しただけなのですし、

この言いようはどうかと思います。津川友介 on Twitter: "確かにタイトルが…すいません😓… " ←こちらでは、タイトルの微妙さも認識しておられるようですから、そこが重要であるのも解っているはずです。なのに、エビデンスを提示しただけと言ってしまうのは、不特定多数に向けた文の読まれかたについて、少々無頓着であるように思います。

食事・食習慣というのは、まさに我々の生活に根付いているものです。それに関して常識として組み込まれているであろうものについて、実は病気になるリスク(確率)を上げるなどの可能性がある、という事を紹介する訳なので、それを解ってもらうのは、そもそも困難であるのが予想されます。ですから、より畳み掛けないような工夫、ワンクッション置くなどの書きかた、などがなされるのが望ましいと思います。