2019年4月28日のメモ

例の結城浩さんの問題について、質問をする。

もし、連載の次回以降で補足される予定だったのだとしたら、野暮な気もするけど、そもそもが相当無理のある設定なので、一応送っておく。

結城さんが執筆なさったこちらの記事、“問題(プレミアム判定キット)” の部分について。

ここで、x は感度ですが、その後で、P(B | not A) = 1 -x と設定されています。これは、非有病の下での陽性者の割合、つまり偽陽性割合です。

一般に、診断学的な文脈では、1 - 感度は、有病者に占める陰性:偽陰性割合を示します。 しかし、結城さんの問題では、1 - 感度を、非有病者に占める陽性:偽陽性割合と設定しています。これだと、感度を決めた時点で、自動的に特異度も決定されてしまいます(特異度:1 - 偽陽性割合 なので)。しかも、感度と特異度が同じとなります。

感度と特異度は別の変数で、しかも、有病割合が 1% と小さいので、陽性反応適中度――P(真陽性 | 陽性)――は、《特異度にこそ》大きく左右されます。 ですから、“問題(プレミアム判定キット)” において、特異度を想定(数値として固定)せずに、感度をどのくらいにすれば良いか、と問うのは、あまり適切では無いと思われます。

感度と特異度はトレード・オフで、その大きさは、検査値のカットオフ・ポイントで左右されます。ですので、現実の検査で例示する場合、ある程度は、その実態に即する説明をおこなうのが望ましいと思います。

それを踏まえた上で、ある種の理想的な検査(感度も特異度も高い)を想定する、というのは構わない場合もあるとは思いますが、それにしても、《感度と特異度が同時に動き、しかも同値になる》のは、やはり問題として無理があるように考えますが、結城さんは、その部分についてはどのようにお考えでしょうか。