検診の効果と過剰診断

まず、観察対象を、確率的に2群に分け(クジ引きなどを使って、各個人がどちらの群に割り当てられるかが、なるだけ同じくなるようにする)、それぞれの群が同じ性質を持つようにする。
この種の文脈では、同じといった場合、確率的な部分が絡んでくるが故に、実際には大体同じようになる事が期待されるという意味合いを指すとする。割合などについても同様。

検診の効果を確かめるために検診をおこなう群を、検診群や介入群、処遇群と言い、検診を受けない群を、統制群や対照群と呼ぶ。

発見数

2つは同じ群なので、両群から発見される がんの数は同じであると予想される。違うのは、発見される時期である。検診群で早期発見が出来れば、見つかる《時期》が早まったと言えるが、最終的に見つかる《数》は同じ。

発見数の差と、2種類の早期発見

同じ数見つかるはずの発見数が違った場合。

検診する群は、
早期発見(症状が出るものを前もって発見) + 検診で見逃した分が後から(症状が出て)発見

検診しない群は、
症状が出てから発見

これらの数が同じはずなのに、検診する群の方が発見が多かったとすれば、それは、

放っておいても症状が出なかった分

も発見した事が示唆される。つまり、

早期発見(症状が出るものを前もって発見) + 検診で見逃した分が後から(症状が出て)発見

と思われたものが実は、

早期発見(症状が出ないものを余計に発見)+ 早期発見(症状が出るものを前もって発見) + 検診で見逃した分が後から(症状が出て)発見

であったと言える。この内、早期発見(症状が出ないものを余計に発見)は、見つけなくとも良いものを発見した分であったという事。これを、

過剰診断

と言う。検診を受けない群では発見されなかったし、する必要も無かった疾病を発見するから過剰なのである。

最初のほうで、

2つは同じ群なので、両群から発見される がんの数は同じであると予想される。

と書いたが、これは実は、

両群で、《がんに罹る人の数》は同じであると予想される。

とするべきであった。そうすると、検診しない群の

症状が出てから発見

はほんとうは、

症状が出ないから発見されない + 症状が出てから発見

として考えるべきであると言える。

死亡割合

それそれの群において、対象の がんで死亡した人の割合を、死亡割合と言う。

検診の効果

がん検診に期待される効果というのは、

早期発見する事によって、死ぬはずであった人を減らす

事である。とすれば、検診の効果が現れたというのは、

死亡割合が低い

これの確認によって示される。
いま考えているのは、同じ性質の2つの群がどうなるか、という事であるから、
両群で がんで死ぬ人の割合は同じ
従って、検診群における死亡割合が低ければ、検診という介入によって死亡割合が低まったと推測出来る。

ここで、検診以外の何か要因が関わっているのではないかとの疑問が出る。そこに、最初におこなった、確率的に、それぞれの群が同じになるようにするという操作が重要となる。クジ引きで2群に分け、検診をおこなうか否か以外の要因が同じくなるようにする。そうすれば、検診そのものの効果を確かめられる。

検診の効果と過剰診断

ここまでを見れば解る通り、

  • 検診の効果
  • 過剰診断

これは、別に話が出来る問題である。これらはそれぞれ、死亡割合の違い発見数の違いとに関わる。組み合わせると、

  • 死亡割合が違う かつ 発見数が違う
  • 死亡割合が違う かつ 発見数が同じ
  • 死亡割合が同じ かつ 発見数が違う
  • 死亡割合が同じ かつ 発見数が同じ

このように分けられる。検診の効果と過剰診断の言葉を使って言い換えれば、

  • 検診の効果がある かつ 過剰診断がある
  • 検診の効果がある かつ 過剰診断が無い
  • 検診の効果が無い かつ 過剰診断がある
  • 検診の効果が無い かつ 過剰診断が無い

こうなる。※理論的には、検診が死亡割合を上げる場合(早期発見が有害)もあるが、それは措いておく。
この内、検診をおこなう意義があるのは、検診の効果がある かつ 過剰診断が無い場合である。次に、検診の効果がある かつ 過剰診断がある場合には、検診の効果の大きさと、過剰診断の割合の程度や治療に伴う害などのデメリットを勘案して、どのくらいおこなうかを決める。

後の2つは、そもそも検診に効果が無いのであるから、検診の実施は推奨されないか、またはおこなってはならない、となる。