過剰診断の言い換え2

最近は、過剰診断を、余剰発見と言い換えています。
これは、過剰診断の概念を、誤診や、余計な箇所を治療する、というような意味に誤解する例を見る事があるため、です。
がん検診においては、過剰診断というのは、将来、それを原因とした有害な帰結に至らないものを、その疾病であると評価する事、を表します。もし、がんに罹患して、それによる症状が出現しないまま、別の原因で死亡するはずだったものを、その がんに罹っていると判断すれば、それは過剰診断です。

時折、過剰診断と、誤陽性(偽陽性を混同するものも見られます。
誤陽性とは、検診の最初の段階、すなわち一次検診(狭義のスクリーニング)において、実は対象の病気を持っていないのに、持っているであろうと評価する(陽性)ものです。これは、精密検査に回され、最終的には、がんでは無いと診断されます。このように、疾病を持っているか否かを決める事を、確定診断と言います。

これを踏まえて、過剰診断とは、実際に病気を持っている人が、確定診断によっても罹患していると判断される、というのが前提です。その意味で、正しく診断されている訳です。正しく診断されたのであるが、将来症状が出ない、という意味で過剰なのであって、病気で無いものを病気であるとするのとは違うのです。
しかるに、過剰という語感からか、誤陽性や誤診(確定診断自体が誤る事)と混同してしまうようです。

そこで私は、見つけなくても良いものを見つけたという意味合いを表すために、余剰発見なる表現を用いるようにしました。術語ではありませんが、字面的あるいは直観的に意味が取りやすそうな表現にしました。

ただ、この表現であると、別の疾病、たとえば高血圧や骨粗鬆症などの過剰診断は表しにくいかも知れません。高血圧などは、力学的な現象を数量化して、その数値を分類するものなので、発見と表現するにはそぐわないように思えるからです。
高血圧などは、数値の線引きが重要で、ここからを重度の高血圧とする、といったポイント(カットオフポイント)の定義が関わってきます。それを踏まえるならば、余剰発見よりは、余剰分類などとする方が、適当なのかも知れません。