偽発見率?
診断学方面では、陽性者の内で正陽性である割合を、陽性適中割合と言う(他にいくつか表現がある)。これは要するに、陽性と予測して当たった割合なので、当然、その逆である陽性と予測して外した割合もある。
陽性適中割合を略すとPPVだから、予測を外した割合のほうは、1-PPVと表せる。つまり、1に対するPPVの補数。生存割合と致死割合との関係と同じ。
疫学等の教科書で、この外した割合に用語が充てられているのは、あまり見ない。もちろんこれは、診断の文脈において、陽性判定がどれだけ当たるのか、がより重要だからだと思われる。
別の分野に目を向けて、統計学の多重検定に関する議論においては、この指標に用語が充てられている。他には機械学習やバイオメトリクスなどだろうか(そちらでは感度や特異度の概念が別の語で表現されたりする)。それはfalse discovery rateなる語。訳語だと偽発見率。例のごとく、この指標は率では無いので、rateはriskかproportionのほうが良いと思う。そうすると、日本語は偽発見割合となる。どうもしっくりこない。発見した訳じゃないし。
いっそ直訳的な充てかたは止めて、(陽性)判定失敗割合とでもしたらどうか。そもそも適中割合だって全然直訳的では無い。直訳のほうの陽性予測値なんて、何を言っているのか解らない。
調べてみると、弓道で的を外す事を失中と表現する場合があるらしい。陽性失中割合。これはなかなか良い。陽性適中割合ともいい感じに対称的になっている。しかし、直感的にはすぐ解るけれど、日常語を組み込むという感じでは無いので使いづらい。ちょっと残念。