感度・特異度・陽性的中度
前のエントリー(割合のはなし――陽性とか陰性とか - Interdisciplinary)で、陽性とか陰性とか、その辺りの診断の話を書きました。
こういう話で結構出てくるのが、
検査で陽性になった時、実際に病気がある確率はどのくらいか。
という問題だと思います。検査陽性になった時にどう行動すればいいかという実際的な所と絡みますし、確率と直感が対応しない話の例としても取り沙汰される事がありますね。
検査を受けて陽性になった時にどうするか、というのはかなりシビアな問題です。昨年は、妊婦のダウン症検査が話題になりました。
で、その問題について詳しく解説されているのがこちらです⇒妊婦のダウン症検査の話、陽性的中率 - aggren0xの日記
この話の肝は、いざ自分が受けた時に陽性だった時それがどういう意味を持つか
という所。そして、感度と特異度が変わらなくても、有病割合によって、「陽性がどういう意味を持つか」が変わってくるという事です。
で、この種の問題は、文字と数字だけでの説明では、なかなか把握し辛いものがあります。どの言葉が何の割合を指しているのか解らなくなってくる。前のエントリーではそれを説明しました。そしてこのエントリーでは、
- 特異度
- 感度
- 陽性的中度
の関係が、より直感的に把握出来るようなものを提示します。
ここでちょっとおさらい。
特異度というのは、病気が無い人の内、陰性の人の割合です。図にするとこう。
感度は、病気を持つ人の内、陽性の人の割合を示します。図は
こうです。そして、陽性的中度は、陽性の人の内、病気を持つ人の割合です。
で、今考えているのは、検査の性能が一定であると考えて、病気を持つ人の割合、つまり有病割合が陽性的中度に及ぼす影響です。有病割合は
こうです。
まずこれらの関係を言葉にすると、
感度と特異度が一定であれば、有病割合が大きくなるほど陽性的中度も大きくなる
という事です。
逆に言えば、感度特異度が同じなら、
稀な病気程陽性的中度は低いと表現出来ます。
こういうのは、言葉だけでは非常に解りにくいです。そこで、これらの関係を、視覚的直感的に把握出来るようなgifアニメを用意しました。
着目している陽性的中度と有病割合が目立つような色付けをしています。どうでしょう。感度と特異度が一定という事は、「横の境目の位置が変わらない」のを意味します。で、有病割合が変わるという事は、「縦の境目の位置が変わっていく」のを意味します。で、有病割合が大きくなるのは、「×の数が減って○の数が増える」事です。そして感度と特異度は一定なので、「×の列(縦の連なり)が1つ減って○の列が1つ増える」変化です。ですから、それに従って、「×(赤かつ×)が減って○(赤かつ○)が増える」のです。という事は、有病割合が大きくなれば、■(赤全体)に占める○(赤かつ○)の割合が大きくなる、つまり陽性的中度が高くなる、と言えます。
これは反対から見れば、検査の性能が一定であれば、病気のある人の割合が小さい、つまり稀な病気になるほど、陽性の人が病気を持っている割合は小さくなるのを意味します。