2022-01-01から1年間の記事一覧

過剰診断の説明

いくつかのパターン 用語のみ書く がん検診では、過剰診断という害が起こる可能性があります。 意味内容のみ書く がん検診では、症状を起こしたり、それによって死ぬ事の無いものまで見つけてしまう可能性があります。 意味内容と用語を両方書く がん検診で…

言葉について

dot.asahi.com 若い頃、自分と他人とで、使っている言葉の意味合いにズレが生ずる事に悩まされていました。また、自分の考えている事を文章にしたり喋ったりする時に、頭の中にあるそれをちゃんと表現出来ない、というのがすごく嫌でした。表現出来ないから…

《スクリーニング効果》を使わない

↓2022年12月9日修正。履歴はコメント欄を参照 福島の検診で見つかった甲状腺がんは本当に増えているのか、それともスクリーニング効果や過剰診断なのか、みたいな問いや議論は、雑と言うか、全く整理されていないものです。 また、そのような議論、あるいは…

スミスさんの子ども

anond.hatelabo.jp ある夫婦に2人子供がいる。片方の子が男であるとき、もう片方が女である確率は? この種の問題の定番として、男女の生まれる確率が等しい(1/2)とします。実際の出生性比は異なるようですが、こういう問題では現象をシンプルに構成し直し…

われわれはどの世界にいるのか

cruel.hatenablog.com たいへん面白い話だと思いましたので、書いてみます。 まず、モンティ・ホール問題については、こちらで図示を試みましたので、興味のあるかたは参照ください↓ interdisciplinary.hateblo.jp 山形さんは、モンティ・ホール問題の説明そ…

IIf関数とIF関数

VBAのIIf関数は、3項演算子では無く関数なので、引数にゼロ除算が入ったりすると、エラーが発生します。たとえば、イミディエイトウィンドウで?IIF(True, 1, 1 / 0)とすると、第3引数も評価されて、ゼロ除算の実行時エラー11が出ます。 いっぽう、Excelのワ…

食鳥肉生食による食中毒リスクに関する情報募集

ご存知のかたがあれば、教えてください。 食鳥肉生食を分母にしたカンピロバクター食中毒リスクの推計→鶏の生肉を食べた場合にカンピロバクターにあたってしまう割合 食鳥肉生食に起因するカンピロバクター食中毒者における、ギラン・バレー症候群の発生リス…

ファクトチェック

ファクトチェックにまつわる話。 ファクトチェックは、 実際と異なった情報が流布される事による害 を懸念しておこなわれるものです。 ニセ科学を批判する方面では以前から、優先順位問題なる言いかたがされてきました。これは、誰かが何かをニセ科学と批判…

害と正味の便益、正味の害

福島の甲状腺がん検診にまつわる議論*1の流れで、余剰発見等の好ましく無い結果をもたらすのを害・ハーム(harm)と呼んだり、検診が推奨されるかの指標として正味の便益(net benefit)を使い出したのは、おそらく私が最初のほうだろうと思います。 余剰発…

ちゃんと知らせたいのなら

有所見健康なる訳の解らない用語はどうかと思うぞ😡 www.jpm1960.org 医学的知識を持たない人が健診を受けて、その結果としてこれらの表現が示される訳です。不明瞭でしょう。

ニコ生の再生の怪

前々から気になっていた事なのですが。 ニコニコ生放送を視聴していて、一時停止をします。たとえば、5:00で停止したとしましょうか。その後、10分くらい経ってから、Bluetooth機器で再生します。普通は一時停止した所の5:00から再開されます。当たり前です…

どうすれば余剰発見(過剰診断)の割合が解るか、何がそれを妨げるのか

余剰発見とは まずおさらい。余剰発見(過剰診断)は、 症状や死をもたらさない疾病を生前に発見する事 を指します。症状をもたらさないものを見つけるのだから、無症状の時に見つけるのが必要条件です。無症状時に疾病を見つけて対処する事を検診と言います…

《リスク》《根拠》の解釈と《メッセージ》

mainichi.jp ↑興味深い記事です。 ここで重要なのは以下の事項。 最新の論文等を参照し、科学の観点から、健康な若年成人においてマスクの着用が熱中症のリスクを上げる根拠が見いだせなかった それ以外の層についてはデータ自体に乏しい マスクを外すのを促…

IEモード

IEはIEモードごと滅ぼせ的な意見もありますが。 言いたい気持ちは解らんでも無いですけど、IE依存(ActiveX必須)の業務システムとかだと作り直しに億かかったりする訳で、その計画は何年も前に立てないといけない、でも何年も前から訴えていても、意思決定…

病悩期間と病識

がん検診の議論において、便宜的に病悩期間の語を用いているけれど、その語は結構色々の意味で使われていて、他に良いのが無いかな、と思っている。 論文等を見ると、病悩期間を、主訴から手術までのあいだ、のように定義したりしている。それだと、がん検診…

《過剰診断を確かめるなら他の地域で甲状腺がん検診をおこなって比較すべきだ》との意見について

裁判と報道 私は、過剰診断で定期的に検索しているのですが、TBS『報道特集』で裁判(「原発事故で甲状腺がんに」6人が訴えた裁判始まる 東電は争う姿勢:朝日新聞デジタル)が採り上げられて以降、 福島で見つかった甲状腺がんが過剰診断だと言うのなら、他…

福島の甲状腺がん検診に関する中川恵一氏の誤り――《超低リスク甲状腺乳頭がん》

hc.nikkan-gendai.com ↑先日にTBSの番組が話題になった事を受け、東大医学部附属病院放射線科准教授の中川恵一氏が福島の甲状腺がん検診について解説した記事です。 中川氏は、福島の検診で発見数が激増した事について、 それではなぜ診断数が増えたのか。そ…

検診の議論で重要な論点リスト

箇条書きします。なぜそう言えるのか、等の疑問があれば、コメント欄にお書きください。誤りが判明すれば訂正します。 思いつくままリストアップしたので、カテゴリーごとにまとまっているとは限りません。 検診は、病気を無症状の時に見つける事である 検診…

鈴木眞一氏は誤診の意味で《過剰診断》を使っていない

過剰診断の語について、2021年の『日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌』において、その用法を問う特別寄稿が病理方面の専門家から出された事が以前話題になりました。 www.jstage.jst.go.jp その寄稿で提言されたのは、次のような内容です(私が以前書いた後述…

室月淳氏による過剰診断を測る説明の誤り

産科医の室月淳氏が、過剰診断についてtwitterで発言していました。 甲状腺がんの過剰診断とは誤診ではありません。病理学的にはがんにまちがいないのですが、進行がきわめておそく生涯でまったく症状を示さないなどです。残念ながら個々のがんにおいて過剰…

検診などの医療介入における《便益と害の両立》

衆議院議員の米山隆一氏が、次のような発言をしていました。 胸単での肺癌検診は兎も角(適切な方法でないと効果が明確でない)、一定の年齢層に対する前立腺癌、乳癌の検診はその有効性がほぼ確立しており、これらの検診で救われた人は少なくありません。漠…

《過剰診断で無い》症例

昨日の記事で言及した報道について。 もし、当該報道で紹介された、裁判における原告の1人の症例が、 甲状腺がんによる症状が発現して、それをきっかけに受診し甲状腺がんが発見された 事例なのであれば、それは原理上、 過剰診断(余剰発見)であり得ない …

TBS『報道特集 原発事故と甲状腺がん』における、福島県の立場の報道を検討する――《過剰診断》の扱いを巡って

TBSの番組『報道特集』(報道特集|TBSテレビ)において2022年5月21日土曜日に、『原発事故と甲状腺がん』と題する特集が報道された。 tver.jp ↑TVerで2022年5月29日土曜日まで配信されているので参照されたい。 当該特集は、福島県の原発事故を契機とする放…

害と便益の比較の難しさ

検診のはなし。 検診を推奨すべきか否かは、正味の便益(net benefit)が認められるかで左右される、という事をこれまで何度も書いてきました。もちろんそこでは、 害と便益との比較 が必要です。でも、これが難しい。何故ならば、そういう比較では、 死亡減…

応用問題──診断と余剰発見

余剰発見の議論等について知っている事が前提です。 福島の検診では、細胞診は確定診断ではありません。手術しないと診断に至りません。 じゃあ、 余剰発見例は必ず過剰処置される と言ったほうが良いでしょうか。だって、余剰発見の必要条件は、確定診断さ…

《過剰診断》を《誤診の意味でのみ》用いるのだとしたら

もし、題のごとく考えるのだとすれば、私は次の質問を投げかけます。 高血圧や精神疾患方面におけるoverdiagnosisはどう捉えるのか overdiagnosisの議論は、何もがん検診に限定された話ではありません。がん検診以外の方面でも、overdiagnosisを誤診の意味で…

高野徹氏による余剰発見(過剰診断)割合の《推計》について──推計になどなっていない

先日、当ブログにおいて、こどもを甲状腺がんの過剰診断から守る医師の会に質問を投げかけました。 ↓質問先の会のtwitter twitter.com ↓質問した記事 interdisciplinary.hateblo.jp そこでおこなった質問を再掲します。 福島での集団甲状腺がん検診において…

『過剰診断(overdiagnosis)の定義と過剰手術(oversurgery)/過剰治療(overtreatment)の用法:病理医と疫学者の見解の差異』についての考察

※先に書いておきますが、1万5千字近くあります 福島における甲状腺がん検診まわりの議論の流れで、2021年に日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌に、過剰診断概念に関する特別寄稿が掲載された。 当該寄稿における主張の概要は次のようなものである。 病理医は過…

《こどもを甲状腺がんの過剰診断から守る医師の会》からの反応

interdisciplinary.hateblo.jp 上記の記事にて言及したこどもを甲状腺がんの過剰診断から守る医師の会から、twitter上でリアクションがありました。内容は次のようです。 1)当会に過剰診断に関する見解を求めている方がおられますが、わたしたちは過剰診断…

再び、《甲状腺がん検診をおこなうべきで無い理由》

もう何度も、題に書いたような事は論じていますが、少しずつ表現を変えたりしながら説明していくのも重要なのだろうと思います。 さて、甲状腺がん検診の話です。これまで言ってきたように、 甲状腺がん検診をおこなうべきで無い理由 は、 甲状腺がん検診の…