福島での甲状腺がん検診議論の整理

福島における甲状腺がん検診の話。 被ばくによる流行vs過剰診断という図式は成り立たない 流行とは、ある地域において対象の疾病の罹患率が、通常より大きくなる事。過剰診断とは、症状発現しない疾病を発見する事。これらはそもそも文脈の異なる議論で用い…

【書評】『新型コロナとワクチンの「本当のこと」がわかる本~【検証】新型コロナ デマ・陰謀論』を読んで

はじめに 昨年末に彩図社から、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19と表記)にまつわるデマや陰謀論を検証した本が出版されました。 新型コロナとワクチンの「本当のこと」がわかる本~【検証】新型コロナ デマ・陰謀論作者:ASIOS,桑満 おさむ,名取 宏,…

映画『マトリックス』(第1作)を観た当時の感想

『マトリックス』の衝撃的な所? はてな匿名ダイアリー(通称は増田)にこんな記事が上がっていました↓ anond.hatelabo.jp 「この世はほんとうの現実じゃない」なんてアイデアはそれこそ古代ローマのころからあるし、別に目新しいものじゃない。 日常生活に…

【リニューアル】感度特異度シミュレータ改め、検査性能シミュレーター

以前、感度や特異度の数値を入力して各指標を視覚的に把握できるように、シミュレーターを作りました↓ interdisciplinary.hateblo.jp 上の記事で紹介したのは8年以上前に作った当初のもので、それから何回かリニューアルしてきましたが、このたび、大幅なリ…

検査性能の証拠、検査と検診の違い

先日に話題になり当ブログでも採り上げた、線虫によるがん検査の一種であるN-NOSEを開発したHIROTSUバイオサイエンスが、問い合わせに対するFAQを公開していた。 HIROTSUバイオサイエンス | 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術 顧客からの問…

線虫がん検査と、がん検査の性能の話

経緯 線虫がん検査(登録商標:N-NOSE)が(悪い意味で)話題になっています。 大まかな流れとしては、 株式会社HIROTSUバイオサイエンスが開発したN-NOSEが精度86%などと謳っていた 上松医師や週刊文春が、N-NOSEの開発プロセスにおいて不正行為があったと…

はてなブロガーから10の答え

blog.hatenablog.com あんたはこういう企画には乗らなそうなのにな、とか思われてそうですけど。たまたま別記事で見かけたので。 はてなブログ10周年特別お題「はてなブロガーに10の質問」 ブログ名もしくはハンドルネームの由来は? idは別のハンドルネーム…

甲状腺がんなどに対する不安を感ずる事と、検診継続の是非

www.asahi.com ※以下、引用文の強調は引用者による 東京電力福島第一原発事故後に甲状腺がんと診断された患者らを支援するNPO法人「3・11甲状腺がん子ども基金」は15日、患者や保護者計105人へのアンケート結果を公表した。がんの再発や妊娠、出産、就職への…

余剰発見と進行

がんが余剰発見されたならば、それは進行が緩徐、あるいは停滞するものである ↑この文は、厳密な意味で正しいでしょうか? 正しくありません。何故ならば、 進行が速く死に至るものであっても、前臨床期に発見され症状発現前に別の原因で死亡すれば、それは…

書評『世論調査の真実』

世論調査の真実 (日経プレミアシリーズ)作者:鈴木 督久日本経済新聞出版Amazon 社会調査のエキスパートである鈴木督久氏が力を入れて執筆した本という話でしたので(鈴木氏のtwitter:鈴木督久 (@pollstok) | Twitter)、読んでみました。 端的に評すると、 …

過剰診断の《程度》

福島の甲状腺検査が相当数の過剰診断を生んでいるのは間違いないだろうし、仮に過剰診断でないとしても、甲状腺癌に早期治療が有効というエビデンスはないので、有害無益な検査なのは間違いないんですよね。受診者に利益があるかのように言って検査を進めた…

大村平さんのはなし

www.jiji.com 数学や品質管理、信頼性工学などに関する普及書を多数執筆なさった大村平さんが、逝去されたそうです。 中学生・高校生の時分、私は数学がとても嫌いでした。典型的な嫌いかたと言いますか、こんな事をやって何になるのだ、と思っていたのです…

福島の甲状腺がん検診の行方──『福島の甲状腺検査と過剰診断 子どもたちのために何ができるか』を読んで

福島の甲状腺検査と過剰診断 子どもたちのために何ができるか作者:髙野徹 緑川早苗 大津留晶 菊池誠 児玉一八あけび書房Amazon 読みました。 タイトルから解るように、福島でおこなわれている甲状腺がん検診の現状について、発見されている甲状腺がんが過剰…

信頼区間

信頼区間は難しいですねー。 参考資料を紹介します。 岩崎学『確率・統計の基礎』(P75)↓ 確率・統計の基礎作者:岩崎 学東京図書Amazon 点推定がひとつの値で を推定するのに対し,区間で を推定する方法を区間推定(interval estimation)という. を小さ…

【メモ】3vs196?――有害事象の比較

www.sanspo.com ↑この記事関連 まとまった検討記事を書こうと思ったのですが、資料や裏取り等が不足していて、各論点に関して充分に根拠に基づいたものを完成させるには至らなかったので、検討出来た部分までをメモとして残します。考察の材料にでもなさって…

数値の見かた――薬剤疫学の観点

news.tbs.co.jp ↑この記事の話。 記事は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンを接種した後に190人以上亡くなったという事の紹介と、亡くなったかたの遺族や主治医への取材とで構成されています。 本記事に対しては、批判もなされています。記事では、…

【メモ】検査について

現段階での整理。 特異度 おそらく特異度は超高い。検査実績からそう言える。他の検査では例を見ないくらい高い。しかも期間あたりの件数も尋常では無い。 感度 疾病の自然史に依存すると思われる。前臨床期では高めにくい。検体を採取する箇所も関わる。 誤…

ワクチンに関する周知

ワクチン接種後の長期経過は不明だから不安になる事自体は、全く合理的な心理です。 COVID-19に対するワクチン群は、通常のワクチン開発と較べても凄まじい速さ早さで開発され、一般への介入に用いられるのですから、打ってから何年も経ったらどうなるのだろ…

《ニセ科学を見抜く方法》はあるのか

ある。が、それは難しい というのが答え。 まずおさらい。ニセ科学とは何か。 科学のようで科学で無いもの の事。だから、ニセ科学を見抜く方法とは、 科学のようで科学で無いものを見分けられるか と言い換えられます。当然それには、科学とは何か、を知っ…

《ニセ科学》という語

note.com 気に入らない。というのは好悪も入るので、そう感ずる事についてはしようが無い、と思います。 ニセ科学の概念と議論に関して、私もそれなりに考えてきたので、リンク先の主張を検討しようと思います。 世の中に数多存在するトンデモを分類するにあ…

【メモ】Trelloのはなし

twitterリアルタイム検索などすると、デフォルトで公開設定になるという意見があるけれど、少なくとも現在はそうなっていない。以前に取得したアカウントで実際にボードを作ってみて、確認したので。作成時に選択できる。 前はデフォルトが公開だった、と書…

《過剰診断》ばかり

synodos.jp UNSCEARによる報告。これが与えるインパクトは大きく、各マスメディアも採り上げています。いや、マスメディアがインパクトを増幅させている、と言ったほうが良いのかも知れませんが。 で、私が懸念していた通り、当該文書にて過剰診断の可能性が…

過剰診断より先に有効性評価の話を

NHKの番組で、福島での甲状腺がん検診が採り上げられ、そこで過剰診断の考えも紹介されたようです。 私は番組を観られなかったので、その内容自体には触れませんが、twitterでの反応を見ると、やはり過剰診断の語に、よく着目されているようです。 ここで以…

良性腫瘍の余剰発見に至るプロセスと、ラベリング効果

私が余剰発見の例としてちょくちょく採り上げるのが、肝血管腫です。 肝血管腫とは、血管の集まった良性の腫瘍で、健診(健康診査)における腹部エコーにて、結構高い割合で発見される(保有割合が高い)事が知られているようです。 文献によると、エコーを…

“「反反ワクチン派」の「医療クラスタ」” は “「心因性」という言葉を気のせい、詐病、大げさなどの意味で使って「全体の公衆衛生のために犠牲になってくれている少数の人」を侮辱” したのか?

はてなブックマーク経由で見かけました。 「反反ワクチン派」の「医療クラスタ」が「心因性」という言葉を気のせい、詐病、大げさなどの意味で使って「全体の公衆衛生のために犠牲になってくれている少数の人」を侮辱したのは忘れないラジよ。— PsycheRadio …

理解してもらう気が無い――検診の有効性議論とニセ科学議論

検診周りの議論。 あれやこれやゆうても無駄です。1点ずつ詰めないと言い逃れされますよ。「甲状腺がんに早期発見・早期治療が有効というエビデンスはないんですよ。」もし、あるならそれを出せ‼️…話はそれからだ。で…OKです。 https://t.co/Wsy6deicKN— 酋…

《正(陽)/負(陰)のラベリング効果》の言い換え案

医療におけるラベリング効果の話です。詳しい説明は↓ interdisciplinary.hateblo.jp ラベリング効果には、好ましいものと好ましく無いものとがあり、それぞれを、 正のラベリング効果 負のラベリング効果 あるいは、 陽(陽性)のラベリング効果 陰(陰性)…

検診の正当化

改めて整理しておきます。 余剰発見(過剰診断)とは 余剰発見とは、 それによる症状が出ない病気を発見する 事です。病気がある/無い と確定するのを診断と呼ぶとすれば、それは過剰診断と表現出来ますし、病気を見つけるという意味内容に着目すれば、余剰…

鶏刺し(鳥刺し)のはなし

togetter.com ↑これを読んで、色々考える所あり。整理も兼ねて。 鶏を生食する習慣がある地域における、生食用食鳥肉の衛生基準 https://www.pref.miyazaki.lg.jp/eiseikanri/kenko/ese/documents/000183422.pdfwww.pref.miyazaki.lg.jp ↑(PDF)宮崎 www.pr…

Excel(やWord)の使いかたについて

政府の動き forest.watch.impress.co.jp Excelなどの表計算ソフトでデータを入力する際のルール(案)を政府が示した、というもの。こういった動きが出てくるのは、まことに結構な事だと思います。もちろん、解っている人にとっては、提示されているのは基本…