いたずらに意味を狭めるな

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甲状腺検査で「がん」あるいは「がんの疑い」とされた人は、4巡目以降を含むことし6月末までに321人で、推計より多いことについては、悪性ではないごく小さながんまで見つけてしまう「過剰診断」の可能性が課題として指摘されています。

↑この文の

悪性ではないごく小さながんまで見つけてしまう「過剰診断」

↑ここ

多重に間違っています。よく言っても雑。

まず、がんは悪性です。だから、がんで悪性ではないものを見つける、と言っている時点でおかしい。悪性度なる語が用いられる事はありますが、用語の整合性の観点から見れば、あまり綺麗ではありません。いずれにしても、悪性では無い、などと表現するのは誤っています。

余剰発見は、小さいものに限りません。腫瘍径10mm以下のがんを微小がんと言います。そして実際に、甲状腺乳頭がんに対する積極的監視療法、いわゆるアクティブサーベイランスの知見によれば、明らかな転移や浸潤の無い微小がんは、余剰発見になりやすいであろう事が示唆されています。ここで、それが直接観察されているのでは無いのは押さえておきましょう。余剰発見である事を直接観察するには、処置せずに他の原因で死亡するのを確認する必要があり、それは困難だからです。

アクティブサーベイランスでは、ある種の微小がん――低リスクと分類されます――が余剰発見になりやすいであろう事が示唆されていますが、それは、低リスクで無いものは余剰発見になりにくいのを意味しません。低リスクで無いものは長期間無処置で観察されないので、余剰発見であるかの判断が著しく困難だからです。

余剰発見の議論は、小さく無いのに余剰発見になるのではないか、という所も重要な論点の1つです。それを踏まえずに、余剰発見は小さなものを見つけるからこそ起こる、との印象を与える書きかたをすべきではありません。