展開・運用・保守

教育用タブレットのはなし。

まず、私の立場としては、児童や生徒のひとりひとりにタブレットを与えて学習用端末とする方針そのものには、大いに賛成するものです。

大まかに言うと、問題は、教育用タブレットを大量展開する業者について、よく解らんベンダーの端末を選定した業者が落札して、その結果、異常な高率で故障が発生してしまった、のような感じ。

入札やら何やらで色々の思惑がある、といった所は措いておきます。その内に明らかになるのでしょう。そうでは無く、学習用や業務用に使用する端末選定と大量展開の観点について。

端末の大量展開および、運用・保守は難しいものです。どう設定・展開するかは当然として、サポートデスクとか故障時の対応とか、色々と考える事があります。ああいう電子機器は、壊れるのを前提として導入するものですからね。ライフサイクルはせいぜい5年前後。

報道では、累積故障台数が4倍くらいになって、その多くはバッテリー異常が原因と見られるとの事です。当然、業者は故障率を想定しておいて、保証期間やライフサイクル、代替端末の確保数などを決めます。それが想定より遥かに高く生じたとなれば、代替端末での対応は間に合いません。単純に台数もそうですし、設定や発送のコストもそうです。期間あたりの故障数が多ければ、代替端末を割り当てる率もそれに応じて高くなって、その分の工数が発生します。新しく端末を選定するとなると、もし最初に選定したのが安価であれば(まあ大概はそうでしょう)、差額の費用増なので、すぐにどうこう出来るものではありません。

バッテリーの膨張が生じているのだから、これは安全性を脅かす話でもあります。なんか上手く起動しないな、という類の障害とは異なります。発火等の事故リスクを高くする訳ですから。代替端末は通常、同じベンダーの機種ですから、そんなのを出して良いのか、ともなるでしょう。教育長の言うように、数千台もの故障が比較的短期間に起きれば、そんな状態を元に戻せるはずがありません。いや、「元に戻す」では無いですね。駄目な端末たちを調達したのだから、今後は当初よりも良好な状態にしなくちゃならないのです。でも、もし安価だからという理由が大きく落札に影響したのであれば、1台あたりのコストは増大するので、やっぱり無理です。だから、損害賠償等の話になるのでしょう。

一般的な業務用より教育用のほうが、端末にタフさが要求されるでしょう。程度は違えど、軍用の物がタフで無ければならないのと同じです。児童や生徒が乱暴に扱うのを前提として選定しなくてはなりません。業務用でも、使用シナリオによっては過酷な環境で運用されるから、同じ事を考慮する必要があります。Panasonicのタフブックなどがあります。PCでも使用シチュエーションによってロングライフモデルの選定が考慮されるでしょうし、バッテリーの問題に対しては、バッテリーレス端末もあります。バッテリーは、熱だけで無く落下等の衝撃に弱いので、児童・生徒が気軽に扱ってぶつけたり落としたりするのを考えると、ここは相当に検討が要される所でしょう。ニュース等でも、発火事故の事例に絡めて、バッテリー搭載の物を落下させたりしたらそれは使うべきでは無い、と言われたりするでしょう。教育用端末でバッテリーレスだと、タブレット端末の利点である携帯性と持ち運びの容易さが失われるので採用はされにくいのでしょうが、実際にバッテリーの問題は重要なので、ここらへんはトレードオフです。

と、こういう所は、業者はよく解っているはずです。データもノウハウもあるでしょう。より正確に言うと、「解っている人もいる」でしょうか。意思決定者が解っていなかったり、目先の利益を重視したりすると、件の問題のように取り返しがつかない事になる訳ですね。業者内部でも、反対した人はあるかも知れません。色々と怖い話です。

Chuwiは、無名と言うよりは、知る人ぞ知る、て感じではないですかね。ニュースを見聞きして、「どこだそれ?」とならず、「なんでそこの買うんだよ」となった人も、結構いるのではないでしょうか。なんか怪しいけどめちゃくちゃ安いから、おもちゃとして買って見ようか…的に検討するような、そういうベンダーでしょう。

PCなりタブレットなりを購入する際に気をつけるのは、バッテリーもだし、ライセンスもそうです。ライセンスと一口に言っても、OSのライセンスもあればMicrosoft Officeなどアプリケーションソフトのライセンスもあります。小規模の調達であれば、中古PCを購入してみようか、となるかも知れません。でも要注意。大概、バッテリー容量は保証しません。経年劣化が激しいので、バッテリー自体が不能になっている場合もあります。バッテリーの不具合が認められたモデルでは、ファームウェア更新対応などがベンダーから案内されますが、中古PCの販売業者が把握しているとは限りません。実際にそういうPCが中古販売サイトで売られていて、何も書かれていないのを見た事があります。

ライセンスは、新品であってもリカバリー等をしないと正規ライセンスのアクティベーションがされない場合もあるし、Officeに至っては、ボリュームライセンス転売で、MS Office入りPCと謳っている事があります。プリインストールモデルで無いのにMS Officeが入っていて2万円とかの中古PC、怪しいですからね。OfficeはPersonal(永続版)でも3万円以上します。

さっきも書いたように、知っている人が内部にいても、安けりゃ良かろうという安直人間が意思決定者にいれば、困った事になります。規模が小さければ損害もさほど、でしょうが、徳島のように数千台にものぼると、関係者は頭が痛い(どころでは無い)でしょう。同じような性能でも、その価格高すぎだろう、てベンダーもあったりするので、高いほうが強い、とも言えませんが。