牧田寛(BB45_Colorado)氏による検査性能の説明、について

牧田寛(BB45_Colorado)氏がtwitter上で、検査性能について説明していました↓

togetter.com

不正確な所や不明瞭な部分が散見されましたので、検討します。

結果として特異度は99.995%〜99.95%が実績となるが、100%と扱って差し支えない。

↑そもそも実績が、何に基づいて算出されたのか判然としませんが、それをひとまず措くにしても、100%と扱って差し支えない事はありません。
その割合だと、特徴を持たない100,000人に検査をすれば、5人が誤った判定を受ける事になります。この議論は、数百万人レベルで検査をすれば、と展開する場合もあるので、そのくらい小さい割合の違いであっても、100%などとは扱えません。何より、実際に誤判定は発生しているのですから。

有病率1%の100人の集団は陽性者1%である。

↑有病率(有病割合)が1%との情報から、陽性者1%は導けません。それを求めるには、感度と特異度の情報が必要です。後に特異度の設定は出てきますが、感度についてはありません。

文献によっては、有病者の事を陽性者と表現する場合がありますが、これは極めて紛らわしいものです。上記引用部をそう読む(有病を陽性と言う)にしても、後の文と整合しません。

特異度だけで推定

↑この部分の意味が不明です。非有病者の部分だけで考える、と読めなくも無いですが、それだと、後の文と整合しません。

特異度99%  擬陽性1名 陽性1名 偽陽性率50%

↑まず、擬陽性(疑陽性)と偽陽性は異なる概念です。一連のつぶやきは、この部分が全て間違っています。仮に正しく用いている(陽性と陰性の間の曖昧の指標)とすれば、特異度の話をしている前提が成り立ちません。参照↓

natrom.hatenablog.com

ここから、擬陽性を偽陽性に読み替えて進めます。

擬陽性1名 陽性1名

↑この部分の意味が不明です。擬陽性偽陽性)と陽性の区別が判りません。直後に偽陽性率50%とある事から、真陽性(正陽性)を指しているのかも知れませんが、もしそうだとすれば、有病者1名(設定から明らか)を正しく判定出来た事になるので、これは感度100%であるのを意味します。それでは、特異度についてのごく小さな設定の違いを重要な事と指摘する主旨に合いません。

偽陽性率50%

↑計算の根拠が解りません。もしこれが、

偽陽性1名÷(偽陽性1名+真陽性1名)

このような計算をしているとすれば、完全に誤っています。そもそも偽陽性とは、

1-特異度

と定義される指標だからです。したがって、この設定だと特異度99%ですので、偽陽性率は1%に決まります。よって、一連のつぶやきにおける偽陽性率の設定は、全て間違っています(特異度と偽陽性率は、足して1になる)。

ところで、偽陽性と陽性(真陽性?)を共に1名としていますが、どうしてでしょうね。有病割合が1%だから、非有病割合は99%です。全体は100人ですから、偽陽性者の人数は、100×0.99×0.01なので、0.99人です。少数だから切り上げた? では、どうして10,000人の集団における偽陽性者を100名としているのでしょうか。実際には99人ですよね。100,000の人口では……もう良いですね。
それでも、非保有者について考えた割合だ、と言いますか? なら、陽性○○名とは何を指しているのでしょう。

こんな感じで、どの語で何の意味(概念)を指そうとしているのか全然解りませんし、定義そのものを間違っているものもあります。それぞれの指標を理解した上で丁寧に書こうとしたが、ついうっかり書き間違えた、というようなものであれば、ああ、ここをちょっとタイプミスなどしたのかな、とすぐに判るのですが、牧田氏の場合、どこをどう誤っているのか自体を捉えにくいような文章です。

参考文献:

しっかり学ぶ基礎からの疫学

しっかり学ぶ基礎からの疫学

今日の疫学

今日の疫学

  • 発売日: 2005/04/01
  • メディア: 単行本