【メモ】例のグラフについて
捏造の語に意図的なという意味合いを込めるのならば、あのグラフが捏造されたものかは不明。意図的に、異なったグラフを作った、という現象を支持する明確な証拠は、現在のところ提出されていない。
グラフによって、提示する者に都合の良いような何らかの印象を、見せる相手に対して形成せしめたい場合には、目盛りをカットしたり、スケールを変えたり、部分的にクローズアップして見せて全体の印象を解らせない、というようなテクニックが用いられる。グラフそのもののかたちを変えた上、出典を示すというのは、騙そうという意図があるにしてはあまりにもお粗末。何故なら、出典を辿れば相違がすぐに判るし、実際に今回はそうして異なりが判明したのであるから。
少なくとも、同型のグラフは2013年あたりには存在していたようだから、その頃すでに、誰かが印象誘導目的でグラフを捏造していた、と考えなくてはならない。もしも、その頃以前に意図的で無く誤って作られたとしたら(つまり、うっかり間違えてしまった、のなら)、過去に無意図的に誤って作られたものを、意図的に騙すために2015年に敢えて引っ張ってきたという可能性を考慮せねばならない。
吉村氏が言うには、誰が作成したか判らないグラフが産婦人科領域にて用いられてきた、との事だが、WEB上では、吉村氏以外によって用いられた記録は見当たらなかった。専門家によってそれなりに用いられてきたのなら、数例は見つかっても良さそうなもの。もちろん、検索不足の可能性あり。
吉村氏のWEBページに掲載されているグラフと、文科省資料にあるグラフは、同型のグラフだが異なる画像である。これがどのようにして作成されたか、が重要。両方ともグラフ作成アプリケーションで作られたのか、それとも、ドローソフト等によってグラフ部分が写されたのか。後者なら、絵画でも無い、量的データを視覚的に表すグラフでそんな事をしてはならないし、前者だとすれば、グラフを描く素となった数値のデータが存在しているのを意味し、じゃあそれはどこから持ってきたものなのだ、となる。
誤っている事を確かめるのと、騙そうとした事を確かめるのは、異なるものである。意図や目的の存在の証拠を集めるのは、実証科学的な証拠を集めるのとは異なった性質のむつかしさを有する。陰謀論の議論に思いを馳せよう。
杜撰な手続き、無知、無能、などで説明をつける事が可能な現象について、早計に意図や目的といった条件を付け加えるべきでは無い。そもそも今回の件は、意図があろうが無かろうが大問題なケースである。そこに、資料作成の関係者による何らかの意図や目的が反映されているか、というのは別個の話。それがあると主張したいのならば、存在を支持するに足る証拠が必要。