菊池誠氏の言説について

anond.hatelabo.jp

菊池誠という人がいて、一時はてな論壇においてそれなりの存在感を放っていた。

はてな論壇とは?

論壇で今も跋扈する科学対非科学という対立軸

科学対非科学という対立軸なる見方は、よく解りません。ニセ科学を批判する論者に対しての、科学主義であるとか、そういう指摘などを非科学の立場に置いて見ている、のかも知れませんが。

2000年代後半。ニセ科学批判という社会運動が産声を上げた。

社会運動をいかなる意味合いで用いるか、にもよります。注目を集めたのは、ニセ科学シンポジウムや、菊池さんのNHK出演の辺り、でしょうか。

これは、自然科学に関する嘘をエビデンス棍棒で殴打するというシンプルかつ大変に社会的意義のある運動

私はこういう文脈で棍棒なる比喩を用いる意義も意味もよく解りませんが、それはともかくとして、自然科学に関する嘘という表現。これが、主に批判されていたものの特徴のような意味合いであれば、そういう言い方は出来るでしょうが、もしこれが、ニセ科学概念の説明を企図したものであれば、それは不足しています。ニセ科学は、自然科学のみならず、広く実証科学一般に関する概念なので*1。たとえば、血液型性格判断は心理学に(心理学を自然科学に含めるかは、学的立場にまつわる難しい議論です)、いわゆる 水からの伝言 は、水の結晶という物理学的観点と、言語の構造という言語学的観点の両方から見る事が出来ます。

はてな市井

はてな市井

よくわからんという人は(引用者註:コールが飛ぶので一部修正)NATROM先生がたくさんいたと考えてください。

NATROMさんは沢山いません。

ニセ科学とは自然科学に関する嘘である。

さきほどと同じ。ニセ科学は自然科学領域に留まりません。血液型性格判断は、単に自然科学に関する嘘ですか? パーソナリティ心理学や社会心理学を自然科学と呼びますか?

例えば近藤誠や武田邦彦の動機は金と売名だし、安倍晋三下村博文共和党の言動は党派性の発露であり、有象無象のブログが代替医療で他人の癌を根治しようと試みるのは無知に基づく善意による。

動機、あるいは内心に関する部分を安易に決めつける事は出来ません。近藤氏や武田氏も善意に基づいているかも知れませんし、そうで無いかも知れません。

引用文以外の部分での見方は、ある程度、的を射たものと思います。

ニセ科学は大きくデマという概念に内包される。デマの分野を自然科学に絞り

絞りません。

特に人文科学系や社会科学系等の他分野の学問においてはその応用が容易いだろう。

そもそも、ニセ科学概念は、人文・社会科学的領域をも射程に入れる事が出来るものです。評価時点でスタンダードな体系と比較してどうズレているか、というものなので、定義上で自然科学に限定する意味は、特にありません。

ニセ科学と人文科学や社会科学系のデマとは地続きの問題であり、ニセ科学批判がニセ科学だけを取り扱うのは、単にそれが自らの領分だからというだけである。

概念の設定によっては(私はそう設定するのが妥当だと考えますが)、地続きと言うより内包と言ったほうが良いでしょう。実証科学的スタンダードとズレ、かつそれをスタンダードと称する言説があって、それぞれが自然・人文・社会 のいずれかに関連しているか、というように見れば整理されるでしょう。

さて、ここから菊池誠とその周囲の言説を掘り返し、断片的な事実を拾い上げ、時系列を整理し、推論を検証し、STS辺りも総括し、ニセ科学批判史とも絡め、最初のテーマに関して結論を出さなければならない。

でもこのテーマ自体は割と意義があると思うので誰か調べてまとめて書いといて欲しい、個人的には(引用者註:コールが飛ぶので一部修正)ublftboさんが適任かなと思う。でも多分やらないだろう。面倒くさいし。

菊池誠という人の思想的・あるいは言動的個人史をまとめる事にどういう意義があるのか、よく解りませんが、少なくとも私自身には、それをするだけの能力も労力も、また興味もありません。

私が時に、菊池さんの発言に批判的に言及するのは、ニセ科学に関する知識を勉強させてもらったし、また、直接やり取りをして世話になった経緯もある、そういう、基本的に姿勢を支持している論者が、分野によっては、根拠不足のままに何らかの主張をおこなっているのを見て、残念に思っているからです。出来ればtwitterでの発言などを改めて頂きたい、単純に、そういう気持ちです。リベラルだの保守だの、左だの右だのの議論については、毫も興味はありませんし、一切関わりたくありません。

追記:2017年4月2日

このような意見。安全圏というのは意味が解りませんが、それはともかくとして。具体例を挙げます。

※時系列順ではありません。自分のブクマなどから拾っています

interdisciplinary.hateblo.jp

左翼はトンデモに弱いというのは一般的言明であって、それには量的な根拠が必要である。たとえば、そこに属する著名な論者がトンデモに弱かったとして(トンデモの定義は措く)、それは、主張を支持しない。

左翼のほうが「デマ耐性」は低い放射能デマの多くは左翼から出て左翼に支持されている。 これら主張について、支持する証拠が示されていない。

もし、ニセ科学批判が主として右翼を喜ばせるのだとすれば、それは「主として左翼がニセ科学に毒されている」ということであって、 この主張の if then の論理的あるいは理論的根拠が不明。

「左翼がニセ科学を取り入れ過ぎ」とする根拠が不明。

右翼はニセ科学に弱くても当然とする根拠が不明。

↑政治については好き勝手に発言して良いという根拠が不明。政治と言っても、誰かの主張を検討するなどのプロセスが含まれる場合があるので、一般に政治に関しては好き勝手な事を言って良い、という道理は無い。たとえば、科学的な事が絡む政治の議論があった場合、好き勝手で構いませんか?

*1:更に広げると、哲学や数学など、必ずしも経験的証拠に基づいた体系で無い分野でも議論する事は出来る

ゼルダの感想

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

クリアしたので。

本当に、よくあれだけのゲームを作り上げたものだ、と思いました。

つらつらと感想

※以下、本タイトルを単に「ゼルダ」と略します
※ラストまでの内容について書きますので、未プレイ・未クリアのかたはご注意ください

グラフィック

モデリング・モーション・レンダリング、全てにわたってよく考え込まれ、作り込まれている、と感じました。 前にも書きましたが、モーション、言い方を換えると動きですね。動きと動きとの繋がり、細かい動作の作り方、など。

最近は良いゲームが沢山出ていますが、まだまだ気を遣って作っていないな、と感ずるものも見ます。ゼルダの場合は、レンダリングはセルシェーダ寄りだけど動きは ある程度動物の動きを忠実に再現する、という方向性で、見事に独特の世界を作り出しています。トゥーンリンクからの表現が生きているのでしょうか。
馬などの動きもよく出来ている。走っている速さによって歩法が変化しますし、乗っているリンクも、馬の動きや周りの環境に応じて、視線や体勢がきちんと変化します。昔の、エポナに乗ったリンク、を思い出すと、感慨深いものがあります。

動物系の動きは、たぶん実際の動物の運動をよく観察して反映させているのでしょうね。神獣も、機械であるのに動物のような動きを表現出来ています。国内のゲームだとMONSTER HUNTERシリーズの出来が良いですが、あんな感じです。

人間の動きの面では、他の作品で気になるのが、前腕が長すぎたり、肩周りの動きが不自然だったりする所なのですが、ゼルダは、破綻せずよく作られていると思います。

あと、子どもの動き・仕草が途轍もなく可愛らしいです。走り回ったり遊んだり。よく作ったものです。

トーリー

ゼルダシリーズは、元々そんなに、ストーリーを緻密に描いて、という方向性では無く、本作も同様。私自身は、もう少し掘り下げたりしても良いかな、と思ったのですが、これは好みの問題かな。

それでも、クリアした時は、映画を観終わった時のような、独特の感情が起こります。

謎解き

今回は、祠を探して謎を解いていくのがメイン。シリーズにある、大きな迷宮を探索していく、というのは余り無いです。そういう意味では、長いダンジョンをクリアした、といった達成感は、そんなに味わえないですね。ハイラル城はダンジョン風で、よくデザインされていますが、それでも、謎解き要素は特にありません。
神獣のギミックは良かったです。よく考えてるなあ、となりました。

祠はミニゲーム集的なもので、これが実によく出来ています。フィジックスを駆使したパズル、ですね。そこまでむちゃくちゃ難しい訳では無いけど、そこそこ頭を使わないと出来ない、という絶妙さ。

クエスト

メインクエスト・ほこらクエスト・ミニクエスト の分類。
私が思ったのは、もう少し、クリアしがいのあるクエストが欲しかったかなと。多くは、祠が見つかる、とかルピーが貰える、といった報酬なので。バリエーションがあって欲しかったかも。

アクション

もう少し難しくて良かったと思います。ボス戦が物足りなかったかな。いや、人によるでしょうけれど。私は、何度もやられてやっと勝てる、死にゲー一歩手前、くらいがちょうど良いと感ずるので。

最後の敵は、展開や演出は大変熱いのですが、戦闘自体は、もっと歯応えが欲しかったです。あれのタイミングはシビアですが。

効果の高い回復アイテムを容易に生成出来るゲームは、難度を格段に下げますね。FFで言うと、エクスポーションが簡単に作れる、という感じ。マックス系料理だと、エリクサーがポンポン作れる。回復アイテムをメニュー画面から使うので、その意味でもタイミングが簡単で、ヒヤヒヤしながら回復、といった局面がそんなに無いです。

システム周り

操作系は、かなり練り込まれています。やはりゼルダですね。

ただ、矢の誤射は結構起こりますね。

装備に関しては、お気に入りセットを登録出来たほうが良かったと思います。天気や地形、敵攻撃の属性によって、頻繁に装備を換えるので、その度にメニュー開いて一つずつ、というのはちょっと煩わしいものがあります。

武器の破損(消失)システムは、賛否ある所でしょう。私は、武器に耐久度があるのはシステム的に面白くなっていると思いますが、もう少し壊れにくくても良かった。バンバンぶっ壊れます。

音楽

とても良いです。ピアノメインで、でしゃばらず、かと言って静か過ぎず。

演技

ゼルダ役の嶋村侑さんの演技が、本当に、本当に素晴らしい。高貴さと幼さとを併せ持った声。自身の未熟さを認めつつも、宿命付けられた役割を全うしようと足掻く、そんな心情の表現。お見事でした。

ありがとうございます

これだけの見事なゲームを作るというのは、素人には想像もつかないほど大変な事だったのでしょうね。素晴らしいスタッフの妥協しない芸術品創りのお蔭様で、代え難いゲーム体験が出来ました。とにかく感謝です。