論理的で無い感想

「大学生数学基本調査」に基づく数学教育への提言

私はこういう文章が大嫌いなのですが、どうしてでしょうね。
「外」の人に届かせる気が全く無いように見えるから、なのか、それとも、数学という「面白い」知の体系について、社会維持や発展の不可欠な要素というのを前面に押し出している所が鼻につくから、なのか。あるいは、文体は丁寧だけどものすごく人を小馬鹿にした感じ*1を受けたから、なのか。
もしかすると、特に比較対照的な観点が無いのに「低下を仄めかす*2」ような書き方がされているから、というのもあるかも知れませんし、「学生の学力低下は深刻化」(リンク先より引用)を前提している所への違和感もあるのかも知れない。数学の問題数問への解答の傾向をもって、「論理を正確に解釈する能力」「論理を整理された形で記述する力」(この2文はリンク先より引用)という、ごく一般的で、心理学的にも考察が難しそうな(構成)概念を云々しているのが気に入らない、というのもあるでしょうか。

どうなのでしょうか。この文章は、「問題点を共有している」人にしか届かない気もします。いや、学会の提言、としては別にそれで良いのかも知れませんけれど。でもまあ、誰でも簡単に見られる場にある文章ではあります。
私が思うのは、この種の、人間の「能力」に関わる問題は、心理学や教育学、学習科学の人達とも連携して、慎重かつ丁寧に行われる必要がある、という事なのですが、この調査は果たしてどこまでそれがなされているでしょうか。他にも、社会調査的な検討も重要でしょう。FAQには、本調査の対象が無作為抽出された標本で無い事が明記されていますが、「その先(ではその方法によって得られた結果をどこまで一般化出来るか)」はどの程度考察がなされているでしょう。

これが、「数学の具体的な問題が解けない大学生が結構いるね」程度の解釈であれば、そうみたいね、となりますが、この「提言」はかなり突っ込んだもののように見えます。FAQでは種々の反論を見越した質問と回答が載せられていますが、どうなんでしょうかね。一見尤もらしそうではありますけれど……。

ちょっと見方をかえて、「もし」、そこにあるような数学の問題に答えられる事が、一般的な論理的能力等をはかれる指標となるとして、実際に相当の割合の大学生がそれを解けないという事実があり、更に、それは昔の学生に較べて「低くなっている」のだとすれば、一体教育の関係者はこれまで何をしてきたの? となるでしょうね。もちろん、「実際そうである」かどうかは解りませんし、この調査でそれが明らかになったか、と言われると、私は、そうである、とは答えられないですけれど。

ちょっとこの問題については、id:kgotolibraryさんの見解を伺いたい所。場合によっては俗流若者論に結び付けられかねないので(もうそういう意見はあるだろうけれど)。

*1:感じなので私の主観。書いた人達の意図とは別

*2:特に明確には言っていないようだけれど