「で、二重盲検法で実験したの?」

何やら怪しげなものが、科学的に妥当であるとか、効果が認められた、などと主張されていた場合に、タイトルのようなツッコミがされるのをよく見かけます。
そのツッコミ、かなりクリティカルなものですが、注意を要するものでもあると思うのです。

と言うのも、「既にやっている」場合もあるから、なんですね。
たとえば、先日紹介した「水」の話。なんちゃら水の効果を臨床的に確かめるために一重盲検(通常は単盲検と言う気がするけど)だの二重盲検だのを行った、と言い張っています。少なくとも、「やっている」とは言える。そういうものに対して「二重盲検はやってるの?」と突っ込むと、「やっていますが?」と返される。

盲検というのは、あるものに特異的な効果を確かめるために、実験者あるいは被験者(や他の人)に心理社会的バイアスが掛からないよう行われる操作です。噛み砕いて言えば、「思い込みの影響をなるべく避ける」ために行うこと。でもあくまでそれは、行われれば望ましい、というようなものであって、「行われれば充分」「行われなくてはならない」といった類の操作ではない訳です。

薬剤の試験などで盲検化が比較的行ないやすい場合には、当然それが必要な条件としてチェックされるでしょうけれど、そもそも不可能な情況もあります。食品のように、偽薬に相当する物を作るのが著しく困難である場合などですね。それから、鍼なども困難ですよね(シール鍼などは可能)。その際に、盲検でないから何も言えない、とはなりませんよね。行われた実験の情況から総合的に判断して、そこから合理的にこう導ける、というかたちで結論が出され、それは色々な知見を与え得る訳です。

要するに、ほんらい問うべきことは、「その実験のデザインは妥当か」という一般的な部分です。それはつまり、「何を確かめたいか」に掛かっています。様々な仮説や理論があり、それを検討するにはどういった研究の設計を行えば良いのか、と一々丁寧に見ていく。盲検というのはあくまで、その内の重要な条件の一つ、という程度にとっておくのが良いのだろうと思います。もちろん、理論的にも技術的にもその操作が可能なのであれば、必要条件として考えるべきこととなるのでしょう。ですが十分な訳ではないと。

たとえば、江本らが「祈り」の効果を確かめたと自称する実験では、「Double-Blind Test」がタイトルに入れられていたり↓
http://www.explorejournal.com/article/PIIS1550830706003272/fulltext

「Triple-Blind」*1を謳っていたりします↓
http://www.ions.org/emails/ishift/articles/radin_crystal2.pdf(PDF)

※kikulogの参考資料↓
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1232850068

こういったのがあるからといって、即「二重(三重)盲検で検証されたのか。それなら正しいのだな」とはなりませんよね。そもそも何を確かめたいのか、確かめるにはどういったデザインを組めば良いのか、他の部分にバイアスの入り込む余地はないのか、など色々検討すべき部分があります。特に、今挙げた「祈り」のようなもの、あるいは超感覚的知覚のような、それが確かめられたら現在の科学の体系の大幅な書き換えを余儀なくされるような現象の検証の場合には、そこら辺を充分に吟味しなければなりません。

                  1. +

ちなみに、このような部分(「二重盲検法」)について、以前kikulogで、ちがやまる氏が注意を促しておられました。傾聴に値するご意見だと思うので、是非参照してみて下さい。
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1265989441#CID1267698982
(このコメント以降のちがやまるさんのコメント。こちらで行われている鍼治療に関する議論も一見の価値があると個人的には思います。)

考えるべきことは、盲検化という心理社会的バイアスの排除の方法以外にも沢山あるのですね。臨床的な実験の場合にも、温度や湿度などの条件、あるいは部屋の色や明るさなどはコントロールされているか、サンプルは母集団から適切に採られているか(逆から見れば、採れたサンプルから一般化可能なのはどこまでの範囲か)、割付はきちんとされているか、尺度の構成はまともか(妥当性・信頼性は確認されているか)、等々。そういった部分がよく考えられているのかを問うのが重要なのでしょうね。

*1:実験に関わる者を分類し、それぞれを盲検化すれば、「○重盲検」と表現出来ます。1)実験者 2)被験者 3)データ解析者 をマスクすれば「三重盲検」になる、といった具合です。