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イケダハヤトさんのホメオパシー紹介記事について

プロブロガーのイケダハヤトさんが、次のような記事を上げておられました。

www.ikedahayato.com

これは、虫刺されや蕁麻疹などが、ホメオパシーで治るらしい、と紹介している記事です。イケダハヤトさんは自ら試してはおられないようですが、twitter上のつぶやきにある、それが効いたという体験談にリンクしてあります。

こちらで紹介されているホメオパシーというのは、18世紀末の医師であるハーネマンを源流とする療法で、同種の法則などの原理に基づいて構築されています。それは、何らかの症状をもたらす物質は、その症状を無くすためにも用いる事が出来る、というような考え方で、治療には、物質を水やアルコールで薄めて(希釈)よく振った(振盪)物を与えます。その薄めた物を、ホメオパシー・レメディ(以下、単にレメディと表現します)と呼びます。レメディは、砂糖玉に染み込ませるなどして与えます。狭い意味では、この砂糖玉の事をレメディと言います。
これだけ見ると、何となくもっともらしいと思われるかも知れませんが、実は、そのレメディの薄め方が問題で、ホメオパシーでは、元の物質が残らないほどに薄められる場合があります。ですので、それが効くのかどうか、という事が、医学界も巻き込んだ論争を呼びました。

ところで、ホメオパシーが効くという記事をイケダハヤトさんは書いておられますが、このホメオパシーは、実際はレメディの事を指していると言えます。ホメオパシーは、同種の法則やレメディの選び方や作り方与え方、相手との相談の仕方、なども含めた療法全体を指す言葉で、より広い意味合いですので、ここでは、その療法の中心となる物であり、イケダハヤトさんも商品を紹介しておられるレメディについて考える事とします。

さて、このレメディが効くかどうかですが、実は、既に効かない事が判っています。と言ってもこれは、元の物質が残っていないくらい薄められているからそう結論した、というのでは無く、レメディを実際に与えて効き目を確かめた、というものです。
もう少し詳しく説明すると、こういう、何らかの薬物や療法の効果を確かめる場合には、実験に協力してくれる人々を、いくつかの集団に分けて、それを与える集団と与えない集団に分け、症状の変化を比較します。
その時、実験をおこなう側は、何かを与えているという心が、相手への接し方に変化を及ぼし、協力者は、何かを与えられているという心が、実際に症状を軽減する可能性があります。もしその療法や薬物に効き目が無いのに、心の働きが症状を良くすると、誤って療法や薬物そのものの効果としてしまう場合があるので、一方には見た目やにおいや味がそっくりだが効かない物を与えて、もう一方には本物を与えて比較するのです。そして、与える側にも、どちらを与えているかが判らないようにしておきます。
そうすると、実験協力者は、自分が、本物と偽物のどちらを与えられているか判りませんし、与える側も、どちらを与えているかが判りませんから、心の働きを揃える事が出来、それを差し引いて残った所の、療法や薬物そのものの効果が判明する、という寸法です。

そして、レメディに関して、このような方法によって、複数の研究が実施されてきました。その内、きちんとデザインされた研究を篩い分け、結果を総合して評価する方法(これを専門用語で、メタ解析と呼びます)をおこなった所、レメディの効果は小さすぎて、偽薬による作用であるという見方と矛盾しない、との結論が得られました。これはつまり、レメディそのものに効果が無いという見方に当てはまる、といった意味合いです。
もちろん、ホメオパシーを推進する側は、このメタ解析に対して批判をおこなっています。しかしそれは、メタ解析に不備がある、というような指摘であり、レメディが効く積極的な証拠を提出出来てはいません。また、レメディが効かない、あるいは効果が得られなかった、効く証拠が不充分である、というのは、他の研究でも見出されている知見です(たとえば、コクラン・ライブラリ)。仮に、ホメオパシー支持側に寄せるとしても、少なくとも効くという証拠は得られていないと言う事は出来ます。

ここまでを踏まえて、改めてイケダハヤトさんの記事を見てみますと、まずタイトルで、「エイピス」を飲むと治るらしい。と書かれています。そして本文で体験談を紹介してありますので、らしいと留保しているとは言え、かなり効く事を示唆していると評価出来るでしょう。つまり、自分で試した訳でも無いし、信じ切っているのでも無いけれど、信頼している人が効いていると言っているし、twitterでも効くという体験談があるから、効くのかも、と誘導していると言えます。これは、イケダハヤトさんが善意に基づいて紹介しているにしても、少々不用意に思えます。特に、ムカデや蜂に刺された場合にも治るらしい、と言うのは頂けません。そういう場合には、針を抜き毒を吸い出す(はてなブックマークでの指摘を受けて追記-2016年10月12日:口では無く、 傷口をつまむ、吸引器を使うなどの方法で毒を出す。(参考資料より)という事です)、水で洗い冷やす、ステロイド軟膏を塗る、などの処置(追記-2016年10月13日:コメントでご指摘いただきましたが、ここに記述しているのは、あくまで蜂に刺された場合という具体例であり、虫や毒の性質によって処置は変わってきますので、それぞれに適した処置をおこなおう、というように読み取ってください。)をきちんとおこなって、出来れば皮膚科を受診して医師の判断を仰ぐべきです。

しかし、そうは言っても、twitterでは効くと言っている人がいるのだから、レメディにも効果があるのではないか、と思われる方もあるかも知れません。ここでは、実際に症状が出て、その後にレメディを使ったら症状が改善した、というのが事実であったと仮定して話を進めます。

以下、いくつかの資料を御覧ください(強調は引用者によります)。

ハチ毒にアレルギーがなければ,痛みやかゆみを伴う発赤や腫脹などの局所症状のみで通常3日間ほどで治りますが、
蜂刺傷 | 事故防止と対策 | 岡山大学保健管理センター
※先ほどの、蜂に刺された際の対処については、こちらを参照しました
初めてハチに刺された人なら通常 1 日以内で症状は治まります。
http://www.hoken.gifu-u.ac.jp/pdf/200907171.pdf【PDF】
追記-2016年10月16日:この部分、初めてハチに刺された場合は重症化しないかのように読まれる可能性があるので、追記します。
ハチ刺されによる短時間での激しいアレルギー症状(アナフィラキシー・ショック)は、1回目でも起こる事があり、死に至るケースもあるので、注意を要します。参照⇒ 蜂毒アレルギーの症状|蜂毒アレルギー|アナフィラキシーってなあに.jp
かゆみはとても強く、一つの盛り上がりが数時間(長くても48時間以内)に跡形もなく消えてしまうのが特徴です(このとき、体のどこかにかゆい盛り上がりがあってもかまいません)。
蕁麻疹|慶應義塾大学病院 KOMPAS
数時間で消える赤い発疹(紅斑)やみみずばれ(膨疹)がみられます。短期間の治療で治る場合もありますが、
http://www.kmu.ac.jp/takii/visit/search/sikkansyousai/d18-018.html

いま示した資料にあるように、そもそも、虫刺されや蕁麻疹は、軽症であれば、数時間から数日で治るものなのです。ですから、イケダハヤトさんが紹介しておられるようなtwitter上の事例は、単に時間が経って治ったものの可能性があります。言い方を換えれば、何もしなくても治ったかも知れない、という訳です。そこに、レメディを与えたという行為を加えたために、レメディを与えたら治ったと考えてしまった、のかも知れません。

雨乞い三た論法というものがあります。これは、

  • 雨乞いをした
  • たまたま雨が降った

という事実から、

  • 雨乞いをしたから雨が降った

と考えてしまう、という心の働きを表したものです(参照:http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~utdpm/poster/2007/ngssanta.pdf【PDF】)。これと同じように、

  • レメディを与えた
  • たまたま症状がおさまった

という経験を、

  • レメディを与えたから症状がおさまった

と考えてしまったという可能性を考える必要がある訳なのです。こういう可能性があるので、薬の効果を確かめる場合には、複数の人を集めて、偽薬と本物を与える集団に分けて評価する、という方法が重要になってきます。それが、前の方で紹介したやり方だったのです。

このように、レメディは効かないと判っています。ホメオパシー側の言い分に寄ったとしても、効くという証拠が無いとは言えます。それであるのに、虫刺されや蕁麻疹に効くかも、と仄めかすのは、良い物を紹介しようという心がけからであるにしても、やはり不用意であるように思います。ムカデや蜂に刺されるというのは毒を受けるのを意味しますし、蕁麻疹の場合には、何らかのアレルギーなどの原因があって、きちんと皮膚科やアレルギー科で治療をおこなう必要があるものの可能性もありますから、まず速やかに、医療機関を受診するのが良いでしょう。プロフェッショナルの医師と看護師による処置・治療と、ケア後のアドバイスも貰えるのですから、効かないと判っている(効くか判らない)物を試すよりも確実ですし、安心も出来るというものです。

参考文献:

代替医療解剖 (新潮文庫)

代替医療解剖 (新潮文庫)

「ニセ医学」に騙されないために   危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!

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