【メモ】新型コロナウイルス感染症に対する検査性能と、検査結果を把握した後の行動傾向など
メモ。一般論や定性的な話含めて。定量的な議論とは別の、こう考える事も出来る、あるいはこう考える人もいるといった所も検討。
- RT-PCRの軽症者に対する感度は低そう(中国での胸部CTと比較した研究など)
- 感度が低くて検査対象を拡大すれば、誤陰性者が結構生ずる
- 誤陰性者の行動の推測いくつか
- 安心して出歩く→感染リスク上げる
- 安心するけど慎重になる→感染リスク不変か下げる
- 症状が長引けば(長い風邪もある)再検査を希望する→感染リスク上げる
- 検査対象を拡大すると、非保有者の感染リスクを上げる可能性あり
- なぜなら、非保有なのに、あえて医療機関という、感染リスクが上昇しやすい所に行き来するから
- ここでの非保有はあくまで新型コロナウイルス非保有なのであって、風邪症状があれば何かしらの感染症に罹っているだろうから、別の感染症罹患リスクに影響を及ぼし得る(インフルエンザの検査も無闇に受けないように、というのと同じ)。だから、公衆衛生上の観点から、軽症の風邪で受診しないのを促す医師もいる
- 迅速・簡易なキットを用いての検査拡大を主張する論者もいるが、簡単では無い(後述)
- 誤陽性の話
- 誤陽性割合がそれなりにある(特異度がそこまで高く無い)との意見も見られるが、それをはっきり示す証拠は?
- 別のRT-PCRの知見を援用する人もいるが、それには限界もある
- RT-PCRは確定診断であり、参照基準であるから、その意味では特異度1
- RT-PCR同士で比較、という見かたも考えられるが、どっちを基準にするか
- 迅速診断キットの使用が適用されたらどうなるか(色々の開発報告がある)
- 誤陽性の問題が、より大きくなる
- 迅速診断を確定診断には用いないだろうから、RT-PCR陽性なりを確定診断とする多段階の検査となる
- 一般に、一次検査(狭義のスクリーニング)は、感度を上げて特異度をある程度犠牲にする(カットオフポイント設定によるトレードオフ)から、誤陽性者が確定診断を受けに行く、といった行動がリスキーになる可能性
- 精度管理の問題。(綺麗に切り離せるものでは無いが敢えて)検査対象を拡大し、検査が多段階になるなどすると、検査自体の性能とは別に、検査を取り巻くプロセスにおいて、検査結果にバイアスがかかったり、他の問題も起こり得る
- コンタミネーション、検体からの感染等。件数拡大すれば、ヒューマンエラー由来の問題もそれなりに出てくるだろう
- 迅速は、誰でも簡単に、良く検査性能を発揮させるのを意味しない。キットの使用にも習熟度が関わる
- 高感度を謳うキットがあるが、実臨床で軽症者に対する高感度を保証出来るのか(迅速診断キットも重症者に限定する?)
- インフルエンザ診断キットの添付文書にも、上で書いたような事が載っている。検体からの感染の危険、バイオハザード対策の注意。確定診断は、臨床症状も診て総合的に判断、とも
- 精度管理の問題については、越智氏などが指摘している
- 安心の問題
- 検査のメリットに、陰性判定による安心(好ましいラベリング効果)を挙げる人がいた
- そもそも、誤陰性が生じ得るのに、それを考慮せず安心を与えて良いのか
- というか、軽症者への感度が高く無さそうなのは判っているのだから、その事(陰性で非保有とは限らない←これは、インフルエンザ迅速診断キットの添付文書にも書かれている)は必ず知らせなくてはならない
- そうすると、陰性はそもそも安心が保証されない事を必ず知らせるのだから、安心をメリットに挙げる事とぶつかる
- 正陰性者にとっては、陰性判定による安心は妥当な安心だろうが、もとより非保有者は検査を受けなくて良いのだから、その人が検査を受けに行く事そのものがリスキーとなり得る
- じゃあ、超簡便な迅速診断(判定と言うほうが良いが)キットを用いて、陽性の人に検体を送らせてから確定診断してもらう(自己によるスクリーニング)、などする?(そう主張する人もいた)
- (実現可能として)そうすると、検体取り違えや紛失などの精度管理上の問題が、また出てくる
- というか、医師が使う迅速診断キットでさえ、コンタミネーションやバイオハザードの危険が注意されているのに、非医療者にそんなものを郵送させるのか。感染性のあり得る物体を。
- 韓国でおこなわれているドライブスルー検査的なものにも、精度管理の問題は出てくる。というか、どんな分野でも、対象数を多くして短時間で処理しようとすると、エラーは生ずる。検体を採取するのも人間だ
- もちろん、接触機会を減らすなどの構造もあるだろうから(メリットとして挙げられている)、それらとの兼ね合いもある
- 胸部CTを診断に用いるべきでは、との意見
- 胸部CTとRT-PCRを比較して、高感度であった、との研究あり
- もし高感度が事実でも、それだけで特異度が高いとは言えないので、誤陽性の問題がでる(他疾患でも同様の初見が出る。日本の専門家集団も、そこを懸念して慎重になるよう言っている)
- 検査一般の話
- 結局、医療介入は、それによって予後が改善される場合に正当化される
- その意味で、検査が予後を改善させる証拠は無い
- 感染症流行の局面の場合には、必ずしも予後を改善しなくとも、サーベイランスによる流行状況把握等の目的のため、検査が正当化される場合もあるだろうが、その時にも、検査で感染が判明したとしても、それ自体が経過を良くするとは言えない事は、知らせなくてはならない
- 福島甲状腺がん検診との比較(これをする人がいるので触れる)
- 誤陽性と余剰発見を混同する人あり。これ論外。議論を混乱させるだけ
- 余剰発見は、正陽性者の一部
- 症状発現無く消退する無症状病原体保持者を発見する事が、がん検診における余剰発見に対応するだろう
- 新型コロナウイルス感染症のような疾病は、甲状腺がんなどよりは、圧倒的に罹病期間が短い
- 今の所、無症状者に特異的な(投薬等の意味での)処置は無いはずなので、その意味で過剰処置は起こりにくい
- がん検診の誤陽性と、新型コロナウイルス感染の誤陽性との害の比較は難しい。両方とも死ぬかもという不安は強く与える可能性がある
- 福島の甲状腺がん検診では、わざと感度を下げている。複雑な事情。一定の小ささの甲状腺がんは隠遁がん(症状が出ない)になると考えられるので、それを発見しないようにする
- これは、感染規模等把握を目的としたり、誤陰性発見による感染リスク行動出現を抑制するために高感度を求めるのとは、かなり性質が異なる
- 差別や不公平な扱いの問題
- 越智氏が論じている
- 感染症患者への差別的扱いなどは、歴史を振り返っても重大事であるのは間違い無い
- 当たり前だが、陽性になると差別されるから検査を控えようとはならない。実施するかしないかは、医学的心理的社会的の様々の事情を勘案して、総合的に決めるものなのだから
- 少なくとも、差別が生ずる事への警戒はしておく
- 観察範囲での例を
- ニコニコでアニメを観る。キャラが咳をする。コロナとコメントが流れる。大きな客船が映る。クルーズ船と流れる。つまり、すごく軽く扱われる
- そういった軽さには、注意しておく。心理社会的な部分は重要。社会的認知
こんな所。考えるべき事は、色々あります。