超音波エコーの解像度が高くなった恩恵として,転移や浸潤,増大の状況が精確に把握できるようになったので,手術適用の判断も的確になった。
— 林 衛 (@SciCom_hayashi) 2023年3月30日
過剰診断の観点からいえば,過剰診断抑制に通じるわけですね。コメントしてくるみなさん,そのあたりご存知でしょうかね。pic.twitter.com/jLbtdvoqsb
超音波エコーの解像度が高くなった恩恵として,転移や浸潤,増大の状況が精確に把握できるようになったので,手術適用の判断も的確になった。
今は検診の話の文脈です。これが正当化されるのは、
前臨床期(症状の無い期間)に見つける事によって、臨床期(症状のある期間)に見つけるより予後が良くなる
のが明らかな場合です。予後が良くなるというのは、寿命が延びたり、総合的なQOLが高くなったり(下げかたを抑える)、という意味です。
前臨床期に見つけるものに、
- 処置すれば効果が得られる
- 処理しても効果が得られない
- 症状発現に至らない
上記のような場合があるのであれば、より分解能の高い技術を用いて選り分ける意味があります。1のみをがんの診断に持って行けるような精細な判別を目指す事の意義が出てきます。
しかるに、検診に反対する向きは、
甲状腺がんは、前臨床期に見つけるべきでは無い
と言っている、つまり、症状の無い期間にその疾病を見つける意味がそもそも無い、と主張している訳です。上の箇条書きの1に相当するものが無いと言っている。だから、前臨床期に見つける技術が高性能になる事のアピールをする主張と噛み合うはずがありません。
林氏は、過剰診断の観点からいえば,過剰診断抑制に通じるわけですね。
と書いておられますが、これは、
エコーで興味深い所見が得られた時
の判断の話です。一般論として、分解能が高ければ、同じような大きさのものでもより細かく弁別出来る。あるいは、他への広がりも解るようになる。その意味では、全部をがんとするよりは余剰発見は抑制出来るでしょう。一部を がんと診断しない方向に持っていく、つまりカットオフポイントを設定し直し感度を下げるので、それは当然と言えます。けれど林氏は、その他のものが
がんと診断される事に意義がある
かどうかについては言及しません。それはそうでしょうね。検診の有効性議論に踏み込まざるを得ず、効果を示す証拠の提示を求められるのですから。