■朝日の記事
朝日新聞デジタル:生レバー駆け込み、食中毒11件 3日間で1年分超える - 社会
一部しか読めないので、気になる所をメモしておいて、後ほど確認。
■何の件数?
記事には、
牛のレバ刺し(生レバー)を食べた人の食中毒が、禁止直前の3日間に全国で11件発生し、54人に症状が出ていた
通常、牛生レバーが原因となった食中毒は年間でも9件程度
こうある(強調は引用者。以下同様)。つまり、
- 今年(2012年)の6月28日-6月30日の間で、「牛のレバ刺し(生レバー)を食べた人の食中毒」が11件発生した。
- 例年(一年間)では、「牛生レバーが原因となった食中毒」が9件程度。
という事である。
私は6月下旬からの食中毒情報を結構細かくチェックしているけれども、レバ刺しが原因とされた食中毒が3日間で11件起こったという事は把握出来ていない。私が押さえているのは、「レバ刺しを食べた→食中毒を起こした」という前後関係による食中毒が何件も発生しているという現象であって、その内、レバ刺しが原因とされているケースはそれほど無い、という事だった。
朝日の記事の文章をよく見てみると、「牛のレバ刺し(生レバー)を食べた人の食中毒」と書いてあり、もう一つには、「牛生レバーが原因となった食中毒」と書かれている。もしかすると、2つは「別の量」なのではないか、という疑問が沸いた。そこで、少しデータを調べてみた。
■データを見る
食中毒事件一覧速報|厚生労働省の「平成23年(2011年)食中毒発生事例」に、平成23年次の食中毒集計ファイル(Excelファイル)がある。そこからオートフィルタで「原因食品」に「レバ刺し」が含まれるレコードを抽出して表示したのが以下の図(見やすいように表のデザインに手を加えてある)。
また、最新食中毒情報検索のスマイルアップは、無料で使える日本最大級の食中毒情報検索サイトです。ではWEB上で色々に条件を指定して表示する事が出来る。ここで、
- 期間
- 2012年1月1日-2012年12月31日
- 原因食品
- レバ刺し
を指定して表示させたのが以下の図。
これらの図を見ると、原因食品が「レバ刺し」「レバ刺し(推定)」とともに、「レバ刺しを含む○○」というものが属している事が解る。そして、このデータから、レバ刺し・レバ刺し(推定)のみを抽出すると、9件となる。という事は、記事にある「9件」とは、それを指していると思われる。念のため、2010年のデータも表示させてみた。
こちらも9件である。
■検討
これらを踏まえると、「9件」というのは、レバ刺しが原因もしくは原因と推定された事例の計であると考えられる。そして、今年(2012年)の6月下旬の3日間で「11件」発生したというのも、その3日間でレバ刺しが原因か原因と推定された事例の数であると解釈出来る。
先にも書いたように、私は、6月下旬でレバ刺しが原因(または推定)とされるものが11件もあった、というのが把握出来ていない。把握しているのは、食べた料理の中にレバ刺しが含まれていたという事例がいくつかあって、原因が明記されたり推定されていたりするものはあまり無いという事である。
再び記事を引用すると、
牛のレバ刺し(生レバー)を食べた人の食中毒が、
こう書かれている。
これらから、2つの解釈が出来る。一つは、実は報道発表されていない事例がたくさんあって、それを合わせると11件になる、という読み方。もう一つは、11件というのは、レバ刺しが原因(あるいは原因と推定)の事例と、「レバ刺しが含まれる料理」が原因のものとを合計した数である、という解釈。
もしこれが後者であれば、「違う量」を比較してしまっているという事なので、気になる所。
実は記事にその辺の事が説明されていたり、私のデータの読み方自体が誤っている可能性があるので、詳しい情報をご存知の方がおられれば、教えて頂ければ幸い。