(疫学的)合理的思考への案内――中山健夫『京大医学部の最先端授業! 「合理的思考」の教科書』
- 作者: 中山健夫
- 出版社/メーカー: すばる舎
- 発売日: 2012/02/22
- メディア: 単行本
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私はパッと見た時、タイトルから、論理学や集合の入門的な部分を紹介したクリティカルシンキング案内のようなものだろうか、と想像したのですが、実際の所は、疫学の考えを中心に噛み砕いて説明してあるクリシンの本、といった風情です。目次など、試し読みが公式ページで出来ます⇒総合出版/すばる舎京大医学部の最先端授業! 「合理的思考」の教科書
内容としては、疫学や医療統計等で扱われる基本的なものですが、それがかなり噛み砕いて説明されています。なるだけ易しく書かれてあり、です・ます調で、量も大部で無いので、気軽に読み進められる事でしょう(ここは重要なのです)。
具体的には、EBM(エビデンス・ベイスト・メディスン)、つまり、臨床的な根拠に基づいた医療の考え方の重要さが、色々な事例と絡めて説明されています。たとえば、バイアス、因果と相関(関連)の違い、数値を見る時には分母を意識する事、比較対照の重要さ、リスク比とリスク差の違い、等々です。いわゆる「雨乞い三た論法」の話もあります。科学やクリティカルシンキングに関心を持つ人にとってはお馴染みのものですが、不案内な人にとっては、この辺の話が大まかにでも色々紹介されているのは、他の本に進むためにも便利なものであると思います。
疫学のみならず、他の分野でも色々な要因同士の関連や因果関係を探るために用いられる、2×2表(クロス集計表、分割表)を書く事の大切さも説明されています。もちろん、それで関連があるように見えても、即因果関係を示すとは限らない、という説明もあります(交絡の話が出てくる)。
また、この種の案内書ではそれほど見る事の無い、疫学で言う「PECO(あるいはPICO)」の考えも紹介されていて、良いですね。私も常々、これは知っておいた方が良いものだと思っていましたので。
※「PECO(PICO)」とは、問題を定式化する時に重要となる要素(P:Patient(患者)*1・E:Exposure(曝露) or I:Intervention(介入)・C:Comparison(比較)・O:Outcome(帰結))の頭文字を取って表したもの。参考↓
EBPTの実践手順|公益社団法人 日本理学療法士協会
色々勉強している人にとっては物足りないと思われる内容かも知れませんが(Amazonレビューは辛過ぎると思う)、私は、これくらいが丁度いいと感じました。あまり詰め込むと、読むのに疲れるでしょうし。これ以上の内容は他の本で勉強するとして、基本的な疫学の考え方をこういう本で押さえておくのは、とっかかりとして良いと考えます(その意味では、文献案内があっても良かったかも)。後、ちょっと経済などに関する事も書かれていますが、それが的を射ているのかは、私にはよく判りませんでした。
*1:本書ではPeople