日傘

根本からの問いとして、

日傘は、ほんとうに熱中症に罹るリスクを低減せしめるのか

と立てる事は出来る。

直感的直観的には、日傘が直射日光を遮り影を作るのだから、そこから連鎖して、熱中症の原因となる体温上昇等を防ぎ、結果的に当該疾病の罹患リスクを下げる、というのは、自明に思える。

けれどもこれは、既知の生理学や物理学等の機構から因果連鎖を推論したものであって、臨床的の根拠とは言い難い。疫学的に考えるならば、メカニズム偏重の主張と捉えられるかも知れない。

いや自明だろう、実証するまでも無いであろう、との反論もあるかも知れない。では自明というのをどう考えるか。60階建てのビルから飛び降りれば死ぬであろう、と言うのと同等の意味合いで自明と言えるのか否か。

パラシュートやシートベルトの話ともつながってくるだろう。日傘と熱中症との関係は、どの辺りに位置づけられるのだろうか。

もちろん、他のリスク、たとえば使用する事による怪我等のリスクなどとも、比較出来ればしたほうが良いだろう。現象は網の目のごとく成っているのだから。こっちを変えればあっちも変わる、という場合はある(因果の綾)。

J-Stageなどを眺めると、日傘が色々の物理量(日光を浴びる事に関するもの)をどう変化させるか、といった研究は見つかる。体温のような生理指標に着目するものも、当然ある。けれども、実際に熱中症のリスクを減らすか、を確かめるものは、あまり無いようだ。

当然、今の議論におけるトゥルーエンドポイントは、熱中症罹患の程度であって、その他の物理量等は、代理指標と言える。しかし、熱中症罹患をアウトカムにした研究は、難しいのかも知れない。当然、RCTは不可能だろうから、コーホート研究などが出来れば良いのだろうけれど。

もちろん、代理指標が、ほんとうに確かめたい結果と強く結びついているのならば、それを用いるのに問題は無い。けれど、調べたいそのものを観察した研究が蓄積されるに越した事は無い、という話。

……とこのように、(自分は普通に日傘をさしていますが)ふと、そもそも日傘で熱中症予防が出来るエビデンスってどんなものなんだっけ? と考えたのでした。

日本の研究を眺めると、たとえばこんなのがありました。