2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

《過剰診断を確かめるなら他の地域で甲状腺がん検診をおこなって比較すべきだ》との意見について

裁判と報道 私は、過剰診断で定期的に検索しているのですが、TBS『報道特集』で裁判(「原発事故で甲状腺がんに」6人が訴えた裁判始まる 東電は争う姿勢:朝日新聞デジタル)が採り上げられて以降、 福島で見つかった甲状腺がんが過剰診断だと言うのなら、他…

福島の甲状腺がん検診に関する中川恵一氏の誤り――《超低リスク甲状腺乳頭がん》

hc.nikkan-gendai.com ↑先日にTBSの番組が話題になった事を受け、東大医学部附属病院放射線科准教授の中川恵一氏が福島の甲状腺がん検診について解説した記事です。 中川氏は、福島の検診で発見数が激増した事について、 それではなぜ診断数が増えたのか。そ…

検診の議論で重要な論点リスト

箇条書きします。なぜそう言えるのか、等の疑問があれば、コメント欄にお書きください。誤りが判明すれば訂正します。 思いつくままリストアップしたので、カテゴリーごとにまとまっているとは限りません。 検診は、病気を無症状の時に見つける事である 検診…

鈴木眞一氏は誤診の意味で《過剰診断》を使っていない

過剰診断の語について、2021年の『日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌』において、その用法を問う特別寄稿が病理方面の専門家から出された事が以前話題になりました。 www.jstage.jst.go.jp その寄稿で提言されたのは、次のような内容です(私が以前書いた後述…

室月淳氏による過剰診断を測る説明の誤り

産科医の室月淳氏が、過剰診断についてtwitterで発言していました。 甲状腺がんの過剰診断とは誤診ではありません。病理学的にはがんにまちがいないのですが、進行がきわめておそく生涯でまったく症状を示さないなどです。残念ながら個々のがんにおいて過剰…

検診などの医療介入における《便益と害の両立》

衆議院議員の米山隆一氏が、次のような発言をしていました。 胸単での肺癌検診は兎も角(適切な方法でないと効果が明確でない)、一定の年齢層に対する前立腺癌、乳癌の検診はその有効性がほぼ確立しており、これらの検診で救われた人は少なくありません。漠…

《過剰診断で無い》症例

昨日の記事で言及した報道について。 もし、当該報道で紹介された、裁判における原告の1人の症例が、 甲状腺がんによる症状が発現して、それをきっかけに受診し甲状腺がんが発見された 事例なのであれば、それは原理上、 過剰診断(余剰発見)であり得ない …

TBS『報道特集 原発事故と甲状腺がん』における、福島県の立場の報道を検討する――《過剰診断》の扱いを巡って

TBSの番組『報道特集』(報道特集|TBSテレビ)において2022年5月21日土曜日に、『原発事故と甲状腺がん』と題する特集が報道された。 tver.jp ↑TVerで2022年5月29日土曜日まで配信されているので参照されたい。 当該特集は、福島県の原発事故を契機とする放…

害と便益の比較の難しさ

検診のはなし。 検診を推奨すべきか否かは、正味の便益(net benefit)が認められるかで左右される、という事をこれまで何度も書いてきました。もちろんそこでは、 害と便益との比較 が必要です。でも、これが難しい。何故ならば、そういう比較では、 死亡減…