《陽性適中度》

適中的中とも。と言うか、後者の表記を見る事のほうが、私の観察範囲の中では多い印象。私が適中の字を使っているのは、足立堅一氏の本を参照してのもので、特に、これで無くては、と思っている訳ではありません。

(PPVの)直訳的には、陽性予測値ですが、これ、字面的には全く直観的で無いと思うので、自分で使う事はほぼ無いです。陽性の場合の割合(確率)なのに、予測値とする所がしっくりこないです。どのくらい合っているかの指標なのですから。

予備知識が無い対象でも直観的に把握しやすいようにと考えると、陽性者内保有割合など考えられるでしょうか。陽性あたりも良いかも知れませんが、この種の指標に下手に、時間的概念は入れないほうが、とも思います(だから私は、事前確率や事後確率の語を、あまり使いません)。

そういう所を突き詰めると、

感度
保有者内陽性割合
誤陰性割合
保有者内陰性割合
誤陽性割合
保有者内陽性割合
特異度
保有者内陰性割合
陽性適中度
陽性者内保有割合
陰性適中度
陰性者内非保有割合

こんな感じになりますね。

せっかく専用の用語を充てているのに、わざわざ文字通りに名前をつけ直してどうする、と言われそうですけれど、もはや専門家同士で閉じて使うような概念に留まらなくなりましたからね(良い事か悪い事かは判りませんが)。それに、専門用語自体も、全然洗練されていないと思います。たとえば偽陽性と言われた場合、何に対する偽(誤)陽性の割合なのかは、ぱっと見では判らないのですから(1-特異度も、1-陽性適中度も、どちらも指せる)。

最近のトピックだと、検査対象者に占める陽性判定者の割合を、陽性率などと呼んでいたりして、またこれがややこしい。先日は、その割合を陽性的中率と言っている人もいて(池田としえ(利恵) on Twitter: "極めて重大な検査指標【陽性的中率】2020/07/31現在 日野市 陽性者43人 陽性的中率 2.33% 東京都 陽性者12691人 陽性的中率 8.32% 日本全国 陽性者34372人 陽性的中率 2.79% 日野97.67%東京91.68%全国97.21%と、誤診の可能性大! ランダムにRT-PCR実施は適切で無い!")、もうぐちゃぐちゃです。こういうのって、話にならないじゃないですか。つまり、同じ語で違う量を指しているので、議論が成立しない訳です。全く何の意味も無くなってしまう。それらを踏まえると、少々面倒でも、なるべく指標の構造・組み立てを表記に反映させるような語を用いたほうが良いと(敢えて造語する事になっても)、私は思うのです。統計学のエキスパートでさえ誤る場合もあるのですから⇒統計学のエキスパートでも間違う例 - Interdisciplinary