【メモ】検査について

現段階での整理。

特異度
おそらく特異度は超高い。検査実績からそう言える。他の検査では例を見ないくらい高い。しかも期間あたりの件数も尋常では無い。
感度
疾病の自然史に依存すると思われる。前臨床期では高めにくい。検体を採取する箇所も関わる。
誤陽性
判明した事例で見ると、保有者検体とのコンタミネーションが主原因と思われる。もしそうだとすると、保有割合が低いほど特異度も高くなると想定される(誤陽性の原因となる保有者検体の割合が小さいから)。
いわゆる陰性証明
証明の語が持つ印象を考慮する。これは実態としては検査で陰性が出た事の証明だが、社会的には保有の証明が期待されている。
陰性適中度
いわゆる陰性証明(書)は、検査がどのくらいの性能であれば機能するか。それは陰性適中度がどの程度かによるし、医学的(疫学的)要請に依存する。以前から、季節性インフルエンザの陰性証明は実際的に役に立たないのではないか、という批判があった。
事後確率
検査の有用性は、事前確率と事後確率の差異を評価する。非保有判定であれば、事後の陰性確率が、事前のそれより高くなるのを期待する。※通常の文脈では、事後確率は陽性適中度を指す
検査対象
無症状者も対象にするか。対象にするとしてどの範囲にするか。濃厚接触者に限るか、イベントの入場者全員なども対象とするか。それによって事前確率(保有割合)も変化する。
再び陰性適中度
もし、他の条件を考慮しない無症状者も対象にするとすれば、おそらく、陰性適中度は高い。何故なら、そういう対象は保有割合が低く、従って特異度も高くなる(誤陽性の原因たる保有者が少ない)と予想出来るから。また、保有割合の低さ自体が陰性適中度を高める(適中度は保有割合に強く依存する)。
じゃあ検査すべきか
すぐにそうはならない。検査は事後確率を高めるかどうかが重要であるから。そもそも他の条件を考慮しない無症状者は、その時点で保有割合が小さいと考えられる。そこから事後陰性確率をどの程度高めるのを求めるかによる。
誤陰性
自然史の初期(特に無症状時)の時点で誤陰性割合が高い(感度が低い)というのは、その人が保有者である場合の話(保有の条件が与えられた場合の条件付き確率)であって、そもそも集団全体においてどのくらい誤陰性が発生するか(保有と陰性の同時確率)、とは別の話。ここをあまり考慮していないのではないかと思われる意見を見る場合がある。
検査をしないほうが良いという論拠
濃厚接触者であるかや、近隣の保有割合は考慮せずに、特定の集団(たとえば、企業の構成員全員)なりシチュエーション(たとえば、大規模動員数のイベント)なりを想定し、その対象に幅広くは検査をしないほうが良い、という意見があった場合、その論拠は、検査の感度が低いからなのか、そもそも保有割合が低いからなのか。よく考える必要がある。理由として、取りこぼすだろうと言うのと、そもそも割合が低いだろうとするのとは異なる。
ベイズ
新型コロナウイルスに対するRT-PCR検査に対し、感度特異度や適中度等の指標を当てはめる意見に対し、ベイズ推定は使えないといった批判が見られる。
診断学的指標と正規分布
ベイズが使えないと言う人の中に、測定値が正規分布状にならないからと主張するものがある。意味不明。各診断学的指標は測定値の分布に関係無く求められ(陽性陰性が判定出来、参照基準があれば可能)、その性能を評価する事で疫学的や公衆衛生学的の役割を考える事が出来るし、いくつもの研究にて指標は算出され推定されている(PubMedなどを見れば良い)。
正規分布
そもそも、現在用いられている検査の中で、測定値が正規分布状になるものがどれだけあるのか。そうならないものには本来診断学的指標を用いてはならないと言うのか。統計学や、信号検出理論を扱う教科書で正規分布曲線が表現されているのは、ある種の理想的情況を図示しているのであって、別にそうなっていなければならないというものでも無い。
ベイズ推定
基本の診断学的指標は、簡単な条件付き確率を用いるもので、それを敢えてベイズ推定と表現する必要は無い。また、各指標を推定する研究において、信用区間を求めるなどの意味でのベイズ推定は、実際に用いられている。その観点からも、検査の議論にベイズ推定は使えないとの主張は誤っている(二重に的を外している)。
スクリーニング
狭義のスクリーニングは1次検査を指す。公衆衛生上、検査は人口における感染制御が目的の場合があるので(新型コロナウイルス感染症対策は、まさにそう)、理想的には、自然史初期において感度が高い性能が要求される(スナウトの性能が高い)。他には、安価迅速で、手順も簡便であり、対象者に負担が少ないほうが良い(肛門スワブよりは唾液採取のほうが楽)。